『サウダーヂ』『バンコクナイツ』など空族を特集!テレビ初&未ソフト化6作品を日本映画専門チャンネルで放送
『サウダーヂ』『バンコクナイツ』などを手掛けた映像制作集団・空族(くぞく)の特集が2月27日、3月6日の2日間にわたって日本映画専門チャンネルで放送される。テレビ初、未ソフト化6作品のほか、空族の魅力を分析する特別番組も企画されている。
「空族」は、映画監督・脚本家の富田克也、相澤虎之助らが名を連ねる映像制作集団。“作りたい映画を勝手に作り、勝手に上映する”をモットーとし、常識にとらわれない長期間に及ぶ独特の映画制作スタイルで知られる。
放送されるのは、地方都市で暮らす外国人労働者や肉体労働者たちを描き、フランスの第33回ナント三大陸映画祭のグランプリを受賞した出世作『サウダーヂ』(2011)、タイ、ラオスオールロケを敢行し日本人専門の歓楽街“タニヤ通り”を舞台にした『バンコクナイツ』(2016)、富田監督の処女作『雲の上』(2003)や仏教をテーマにした『典座 -TENZO-』(2019)など。
特別番組「いま、映画作家たちは2020-2021 空族にまつわるいくつかのこと」では、俳優の渋川清彦、川瀬陽太、スタイリストの伊賀大介、映画評論家など文化人のインタビューを交えて、空族の「いま」に迫る。
空族のコメント、放送スケジュールは下記の通り。(編集部・石井百合子)
2月27日
22:00~『サウダーヂ』(2011年)テレビ初・未ソフト化
深夜1:00~「いま、映画作家たちは2020-2021 空族にまつわるいくつかのこと」(2021年)
深夜1:30~『雲の上』(2003年) テレビ初・未ソフト化
深夜3:35~『国道20号線』(2007年)テレビ初・未ソフト化
3月6日
21:45~『バンコクナイツ』(2016年)テレビ初・未ソフト化
深夜1:00~「いま、映画作家たちは2020-2021 空族にまつわるいくつかのこと」(2021年)
深夜1:30~『チェンライの娘』(2012年)テレビ初※短編
深夜2:25~『典座 -TENZO-』(2019年)テレビ初・未ソフト化
<空族コメント>
わたしたちが空族と名乗り映画を作るようになって20年が経とうとしています。当時はまだ、映画はフィルムで撮られるべきもので、ビデオの画質は映画に耐えうるものではありませんでした。当然、それまでわたしたちが観てきた映画はすべてフィルムで撮影されたものばかりでした。そんなわたしたちが映画を作りたいと当時選んだのは8ミリフィルムでしたが、それは資金力のないわたしたちの手に届くのが8ミリフィルムしかなかったということでもありました。もちろんビデオという選択肢もありましたがそれはわたしたちにとって映画ではありませんでした。とはいえ、8ミリ映画が劇場公開されるということもまたあり得ません。それでも作りたかったのが『雲の上』(2003)という作品です。つまり『雲の上』は劇場公開されていない初期作品ということになります。
時代はデジタル化を推し進めます。カメラなどの機材もデジタルが登場、劇場にもビデオプロジェクターが設置されはじめますが、空族はその流れにあらがうように、『国道20号線』(2007)を16ミリフィルムで撮影します。そして『サウダーヂ』(2011)を35ミリフィルムで完成させる頃には、世の中からフィルムというものが消えようとしていました。気が付けばわたしたちは自らの作品のソフト化も拒んできましたが、これはいうまでもなく、レンタルビデオ時代にあらがう態度でした。つまり、これまでの空族にとって映画とは、フィルムであり、劇場で観るべきものだったのです。しかし時は更に大きく進みました。『バンコクナイツ』(2016)、『典座 -TENZO-』(2019)は最初から最後までデジタルビデオで完成させたものです。そして、これまで劇場を守ろうとソフト化を拒み続けてきたわたしたちが、作品の放送に踏み切ったというのはもちろん、コロナウィルスの世界に与えた影響の大きさというのがあります。そして、このことはわたしたち自らにとってもひとつの大きな区切りにもなりました。いずれにせよ、わたしたちの作品が、これまでにない規模でたくさんの観客の目に触れる機会になることを望みます。そして、その機会を与えてくださった日本映画専門チャンネルに心から感謝致します。