大阪アジアン映画祭、横浜聡子監督『いとみち』がグランプリ&観客賞のW受賞
第16回大阪アジアン映画祭の受賞結果が14日に発表され、横浜聡子監督『いとみち』(6月18日青森先行公開、6月25日全国公開)がグランプリと観客賞をダブル受賞した。横浜監督は「初回上映時に客席にいながらいくぶん緊張しておりましたが、その緊張が、“審査委員の方々やお客さまに何かしら伝えることができたのかもしれない”という小さな実感と喜びに徐々に変わり、今じわじわと胸に押し寄せております」とコメントを寄せた。
同作は越谷オサムの同名小説が原作。津軽三味線は得意だが強い津軽なまりと話し下手がコンプレックスな青森の女子高生が、メイドカフェでのアルバイトをきっかけに新たな一歩を踏み出していく成長物語。青森出身の横浜監督が地元でオールロケを行い、主演の駒井蓮をはじめ出演者も青森出身者多数のご当地映画だが、駒井が約1年にわたる猛特訓を受けて見事な津軽三味線を披露しており、実に見応えある青春映画に仕上がっている。
例年審査員は複数の国籍のメンバーで構成しているが、今年はコロナ禍の影響で海外ゲストを招へいできず。そこで配給会社代表の有吉司、映画ジャーナリスト・金原由佳、鈴木卓爾監督の日本人のみが審査員を務め、日本作品に最高賞を与えることに対して議論が交わされたという。
しかし「横浜聡子監督が故郷・青森に戻り、深度のある人物像を構成したことを、評価しました。定型のフィクションドラマなのにステレオタイプにならない魅力がこの作品には満ち溢れています。ヒロイン役、駒井蓮さんの独特のビートに心が沸き踊りました」と受賞理由を説明した。
同映画祭のフィジカルな開催はこの日をもって終了したが、オンライン版は3月20日まで行われる。(取材・文:中山治美)
受賞結果は以下の通り。
■グランプリ(最優秀作品賞。副賞:賞金50万円)
横浜聡子監督『いとみち』(日本)
■来るべき才能賞(アジア映画の未来を担う才能へ。副賞:賞金20万円)
チェ・ジニョン監督『生まれてよかった』(韓国)
■ABCテレビ賞(朝日放送が最も優れたエンターテインメント性を有する作品に授与。副賞:テレビ放映権として100 万円)
キャシー・ウエン監督『姉姉妹妹』(ベトナム)
■薬師真珠賞(上映作全ての作品の出演者が対象、最も輝きを放っている俳優に授与。副賞:真珠装飾品)
リー・リンウェイ『人として生まれる』(台湾)
■JAPAN CUTS Award(米ニューヨーク市のジャパン・ソサエティーがエキサイティングかつ独創性溢れる作品に授与)
中濱宏介監督『B/B』(日本)
■JAPAN CUTS Awardスペシャル・メンション
中村真夕監督『4人のあいだで』(日本)
■芳泉短編賞(副賞:次回作研究開発奨励金として10万円)
オ・ジョンソン監督『イニョンのカムコーダー』(韓国)
■観客賞(副賞:真珠装飾品)
横浜聡子監督『いとみち』(日本)