「青天を衝け」田辺誠一、恋する吉沢亮が「かわいかった」 役者としての引き出し絶賛
吉沢亮主演の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほかにて放送)で主人公・渋沢栄一の従兄・尾高惇忠(おだかじゅんちゅう)を好演する田辺誠一が、共演して変わったという吉沢の印象について語った。
60作目の大河となる本作は、「日本資本主義の父」と称され、新一万円札の顔としても注目される実業家・渋沢栄一(吉沢)の波乱に満ちた軌跡をたどる物語。田辺が演じるのは、渋沢一族・尾高家の長男。近隣で随一の秀才で早くから水戸学に傾倒。従弟である栄一や喜作(高良健吾)に学問や剣術を教え、大きな影響を与えた。
栄一が惇忠をリスペクトするのは、その懐の深い性格ゆえでもある。田辺は、惇忠と栄一らの関係について「惇忠は栄一たちより10歳ぐらい年上なので、みんなの面倒を見る『兄い』としての立場だけではなく、剣術や学問の『先生』という側面があります。僕も、祖父が教師と農業を兼業していたので、似たようなところも感じています」と自身の体験を重ねながら語る。
惇忠は、早くから尊王攘夷思想に傾倒していくが、演じるうえでは「冷静さ」を心がけているという。「実際、ロケに行って感じたことですが、大地や土を触っている強さというか、過酷さも含めて、尾高惇忠の思想や生き方が生まれたのかなと思いました。惇忠はたまたま早く生まれてそういった立場ではありますが、例えば剣術の腕前は長七郎に追い抜かされたりしています。それはそれで教える立場としては嬉しいですし、喜びでもあります。あんまりガッチリとした上下関係では無く、同じ目線で成長して行ければと思っています。後に惇忠は富岡製糸場の工場長になりますが、自分の娘をはじめとして女性を積極的に活用したりと、比較的フラットなものの見方ができる人だと思いますので、栄一や喜作たちに対してもあんまり上から物を言う感じにはならないように意識してます。あとは、尊王攘夷であったり思想があんまり過激にとられないように、あまり感情的に見られないように冷静に演じたいと思います」
吉沢とは本作が初共演となるが、共演前後でかなり印象が変わったようで「以前は吉沢さんに都会的な洗練されたイメージを持っていましたが、いざ実際に共演してみると実は土くさいというか男くさいというか、しっかりと地に足がついてる印象を受けました。これは最初にお芝居をした時から今でも変わってないですし、僕が知らなかったシーンとかも放送でいっぱい見るとはつらつとして、すごく頼もしいです」と話す。
田辺は、とりわけ第7回「青天の栄一」での吉沢の演技に注目。栄一は惇忠の妹で幼なじみの千代(橋本愛)に思いを寄せながら、素直に自分の気持ちを伝えられずかなりこじらせていた。「千代が好きだ」という喜作に対し、「千代はやめておけ」という栄一。田辺は、栄一の恋の駆け引き、演じる吉沢について以下のように振り返る。
「栄一は自分が千代を好きだという本心を悟られないように喜作を止めようとするやり取りが交わされるのですが、惇忠は横で2人のことをじっと見ています。栄一の気持ちを知らない惇忠からすると、妹のことを心配して守ってくれているのかな、みたいな感じだと思いますが、その時の吉沢君の芝居がすごく面白くて。実は自分も千代が好きだという気持ちを悟られないよう、栄一が喜作をけん制するかのような主張をしたかと思えば、それが効かないとなるとへこみながら次の手を打ったり、つい感情が表に出てしまい好意がバレそうになったり、相手の表情とかちょっとした言葉尻でうろたえたり、急に相手にマウンティングを仕掛けたり……。自分の本音を隠しながら、そして相手に悟られぬようにと栄一の攻防が続くのですが、吉沢さんの役者としての引き出しがすごいと思いました。同じパターンを繰り返しても視聴者に飽きられてしまうので、毎回違う手法でヒートアップとアップダウンを表現していて、見ていてすごく面白かったですし、あと吉沢さんもかわいかったです(笑)」
明治維新後は惇忠が富岡製糸場の初代場長となり栄一を支えていく展開になるが、田辺は吉沢が演じる栄一の魅力について「非常にクレバーな合理的な考え方の持ち主ですが、かといって血が通っていないわけではなく義理人情に厚かったりと、すごく人間的だと思います。その上でみんなが幸せになるために行動したり、不条理に対して『違う』と思ったらそれを表に出せたりというのはすごいなと思います」と話している。(編集部・石井百合子)