シム・ウンギョン感無量「この作品がなければ今の自分はいない」
女優のシム・ウンギョンが9日、シネスイッチ銀座で行われた映画『椿の庭』(公開中)初日舞台あいさつに登壇。シムにとって初めての日本映画の撮影現場となった本作に「この作品がなかったら、今の自分はいませんでした」と感無量な表情を浮かべていた。舞台あいさつには、シムと共にダブル主演を務めた富司純子、鈴木京香、上田義彦監督も出席した。
本作は、写真家の上田義彦が、構想から十数年の歳月を費やし作り上げた家族ドラマ。神奈川県葉山の海が見渡せる日本家屋に住む絹子(富司)と孫の渚(シム)の1年を、四季折々の美しい景色と共に描く。
映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞に輝き、レギュラー出演した連続ドラマ「七人の秘書」も大きな反響を呼ぶなど、女優として目覚ましい活躍を見せるシム。本作は、シムが出演した日本映画の『新聞記者』や『ブルーアワーにぶっ飛ばす』よりも前に撮影されていたようで「わたしにとって初めての日本映画の撮影現場でした」と語る。
シムは当時を振り返り「日本語のセリフを含め、どう演じたらいいのか悩みもあったのですが、上田監督をはじめ、富司さん、鈴木さんが温かく見守ってくださったので、ゆっくりと渚という人物の気持ちを感じることができました」と感謝を述べる。
普段はしっかりと役を作って現場に臨むというシムだが、本作では「渚はわたしそのものと感じたので、現場で感じたことを表現するやり方をしました。ドキュメンタリーなのかお芝居なのか……曖昧なところを見せられたらと思って演じました」と新しい表現にチャレンジしたという。
一方、富司は「1年間の四季を通して撮影したのですが、毎日が楽しくて、いま顧みてもあっという間の時間でした。素敵な日本家屋の中、娘に京香さん、孫にウンギョンさんというステキな女優さんたちと、本当の家族のように過ごした時間でした」と撮影を振り返ると「上田監督が本当に繊細で素晴らしい映像を撮ってくださり、わたしにとっては最後の宝物になるのではないかと思うぐらい嬉しい映画でした」としみじみ語った。
絹子の娘で渚の叔母・陶子を演じた鈴木は、「富司さんは特に憧れを抱いていた女優さん。何度か作品をご一緒したことはあったのですが、ほぼ初めて撮影現場でお話しすることができました。わたしの中での理想の女性とご一緒でき、普段の生活も富司さんのように背筋を伸ばして過ごそうと思いました」と笑顔を見せると、シムに対しても「渚とウンギョンちゃんが重なって、切ないぐらいきれいでした」と称賛していた。
シムは「富司さん、鈴木さんという素晴らしい女優さんとご一緒できた作品。お二人に感謝したいです」と頭を下げると「わたしにとって最初に出会った日本映画の現場。この作品がなかったら、今の自分はいないと思っています」とシムにとっても大切な作品となったことを強調していた。(磯部正和)