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庵野秀明『シン・エヴァ』大ヒットに感謝!「こんなニッチなロボットアニメで」

庵野秀明
庵野秀明

 映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の庵野秀明総監督が11日、新宿バルト9で行われた同作の大ヒット御礼舞台あいさつに鶴巻和哉前田真宏両監督とともに出席し、多くの人が劇場に足を運んでいることに何度も感謝しつつ、「こんなニッチなロボットアニメで100億を狙えるというのはアニメ業界にもいいこと」語った。なお、この日の司会は、主人公碇シンジ役の声優を務める緒方恵美が務めた。

【動画】庵野秀明らが『シン・エヴァ』小ネタを明かす!『シン・エヴァンゲリオン劇場版』大ヒット御礼舞台あいさつ

 本作は、社会現象を巻き起こしたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を再始動させた新劇場版シリーズの最終章。監督陣が登壇するのは新劇場版の歴史の中でも最初(新世紀時代からのカウントだと、26年間で初)で最後という貴重な機会となった。大勢の観客で埋まった客席を見渡した庵野総監督は「僕がエヴァ関連で表に出るのは、最初の製作発表会見の時と、1本目が春に間に合わないとなった時の謝罪会見以来。今日はスタッフの代表として、直接皆さんにお礼を言う最後のチャンスと思い、出ることにしました」とあいさつ。会場からは割れんばかりの拍手がわき起こった。

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イベントの様子

 3月8日に初日を迎えた本作は、4月7日時点で興収70億円を突破。この大ヒットを受けて「本当にありがたいですよ。もう前作の『Q』を超えていて。80億円をちょっと超えたら、僕の中では、総監督をやった『シン・ゴジラ』(最終興行収入82.5億円)を超えたレコードになるんです。そして100億を超えると、アニメ業界の活性化にもいいんですよ」と意気込んだ庵野監督。その理由について「『鬼滅(の刃)』や新海(誠)さん、ジブリの作品なら100億を狙って当然。でもエヴァはロボットアニメなんですよ。ガンダムですら100億はいっていない。こんなニッチなロボットアニメで100億を狙えるというのはアニメ業界にもいいこと」と笑顔を見せた。

 庵野監督に密着したNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」(3月22日放送)は、庵野監督の強烈なこだわりと、そのビジョンの実現に右往左往するスタッフたちの姿が大きな話題となった。鶴巻監督も「テレビの放送のせいで、体調を心配される方もいて。声をかけていただくことが多いんですが、体調は大丈夫なので、安心してください」と呼びかけ、会場は大笑い。鶴巻・前田両監督とも、そんな過酷な作品作りの日々を乗り越え、安堵(あんど)した様子だったが、庵野総監督も「僕も終わった時は安堵(あんど)しました」としみじみ。だがすかさず「終わった時はスタッフへの感謝ばかりだったんですよ。各セクションのひとりひとりにお礼を言ってまわったのが僕のエヴァの終わりでした。でもそういうところはNHKは撮っていないんですよね」とちゃかしてみせて、会場は大盛り上がりだった。

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 その「プロフェッショナル~」について、庵野総監督は「僕は観ていないです。基本、僕が映っているものは観ないんです。嫌だから」とキッパリ。庵野総監督自身、同番組内でも番組のタイトルが好きではないということに言及していたが、「今までずっと断っていたんですよ。あれ(タイトルの件)が断ってきた理由だったんですが、今回はエヴァをやってくれるというので、お願いしました」と密着を許可した理由を明かす。また番組内では、NHKの番組クルーに対してもっといろいろな場面を撮ってほしいと注文をつけるくだりもあったが、この日も「4年間の密着と謳っているけど、来ていなかった時期もありましたからね。これを撮っておけばいいのに、というようないいシーンもあったんですよ。でも本当にいいところに来ていないんです。バーチャルカメラのところとか、もっといいところがいっぱいあったんですけどね。だからカメラに向かって言ったのに」とここでも注文をつけるなど、その番組内と変わらない姿勢のコメントで会場を笑いに包んだ。

 本作は、絵コンテを切ることをせずに、モーションキャプチャーや、セットのミニチュアを取り入れ、そこから映画の画面に最適なカメラアングルを探っていくという手法がとられた。「もちろんこの技術を使わなくてもアニメは作れるんですが、頭の中にあるものを手で描くだけで済ませたくなくて。実際に存在するものを切り取ることでアニメーションを作りたい、という気持ちは『序』の時からあったんですよ」という庵野総監督。「いろんな技術が発達して、ようやく今回できるようになったんです。でも時間もお金もかかるんで、他の人はあまりやらないんですけど、この作品は自主制作なので、そこはなんとか頑張ってお金をそこにまわしましたが、本当に大変なのでやらない方がいいですよ」と力説し、会場を沸かせる。

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 この日のイベントでは特に「実写とアニメのハイブリッドということは『序』の頃から少しずつやっていたけど、あの時はCGに近かった。それからちょっとずつそういうやり方を増やしていった。ちょうど『Q』と『シン』の間に『シン・ゴジラ』があったので。そのノウハウがこちらに活かせるなと思いました。『シン・ゴジラ』を作っていなかったら、こうはなっていなかった。あの映画をやらせてもらって良かったです」と語った。

緒方恵美と庵野秀明

 またアフレコについても従来のやり方とは違っていたようで、「録り方がが今までとだいぶ違っていて。かなり細かく分割して録らせていただいた。だいぶ長い期間をかけて録りました」と振り返る緒方。庵野総監督も「ひとりひとりバラバラで録っていって。テイクもバラバラなんですよ。ひとつのセリフの中のセンテンスも、このテイクとこのテイクといった感じで合わせたりとか、歌ものに近いことも人によってはしたりするんで。それを感じさせないだけの、もともと来ている声優さんは演技力と力があるので、それをやっても大丈夫だろうと。(実際の収録では)掛け合いをしていないのに、掛け合いをしているようにしか聞こえない。それは本当にすごいことですよね」と声優陣に全幅の信頼を寄せている様子。その言葉に緒方が「本当に大変でした」と振り返ると、庵野総監督も「大変だったよね。でも緒方はまだ楽な方だよ」とねぎらってみせた。

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手を振る庵野秀明

 そんな大盛り上がりの舞台あいさつもいよいよ終盤。最後のメッセージを求められた庵野総監督は「頭にも一度お礼を申し上げましたが、改めてありがとうございます。製作の途中からコロナ禍に見舞われて。僕らだけでなく日本中、世界中が大変な時期が今でも続いています。そういう大変な時期に映画館まで足を運んでいただいて、作品を面白いと言ってくださって感謝しています。本当にありがとうございました」と呼びかけると、会場からは大きな拍手が。そんな観客の熱い思いを一身に浴びた庵野総監督は帰り際、感謝の思いを込めて、客席に向かって何度となく頭を下げていた。(取材・文:壬生智裕)

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