監督賞は『ノマドランド』クロエ・ジャオ!アジア系女性監督初の快挙
第93回アカデミー賞
第93回アカデミー賞授賞式が26日(現地時間25日)、米ロサンゼルスほかにて行われ、映画『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が監督賞を受賞した。女性監督としては『ハート・ロッカー』(2008)のキャスリン・ビグロー監督以来史上2人目、アジア系女性監督としては史上初の快挙となった。
『ノマドランド』は、企業の破綻とともに住居を失い、最愛の夫も亡くした60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)が、車上生活者=現代のノマド(遊牧民)として季節労働の現場を渡り歩く姿を描いたロードムービー。ジャオ監督は本物のノマドたちを本人役でキャスティングし、主演のフランシスにはその中に身を投じさせてノマドのコミュニティと同じように暮らしてもらい、7つの州を5か月かけて一緒に旅していった。ドキュメンタリーとフィクションの境界を曖昧にしてノマドの核心に迫り、感動で胸を打つジャオ監督の手腕は高く評価され、第73回全米監督組合賞、第74回英国アカデミー賞、第78回ゴールデン・グローブ賞などの前哨戦で監督賞を総なめにしてきた。
ジャオ監督は1982年、中国・北京生まれ。ほとんど英語もわからなかった15歳の時、両親によってイングランドの寄宿学校に入れられ、その後、夢だったアメリカへ。マウント・ホリヨーク大学で政治学を、ニューヨーク大学で映画制作を学んだ。現代に生きるカウボーイを追った前作『ザ・ライダー』(2017)が絶賛され、今回『ノマドランド』でオスカーを獲得。アンジェリーナ・ジョリーら出演のマーベル大作『エターナルズ』(11月5日日本公開)の監督にも抜てきされるなど、ハリウッドで今、最も注目されている監督といえる。
壇上に立ったジャオ監督は「私は世界のどこに行っても、常に出会った人々のなかに善意を見てきました」と語り、分断の進むアメリカに向けるかのように「それゆえにこの賞を、自らの善意を心にとどめ、互いの善意を保ち続ける信念と勇気を持つ人々にささげます」とメッセージをささげた。
ジャオ監督のほかに監督賞にノミネートされていたのは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネル監督、『Mank/マンク』のデヴィッド・フィンチャー監督、『ミナリ』のリー・アイザック・チョン監督、『アナザーラウンド』のトマス・ヴィンターベア監督。監督賞に女性監督が複数ノミネートされたのも、史上初のことだった。(編集部・市川遥)
第93回アカデミー賞授賞式は、4月26日(月)午前8時30分よりWOWOWプライムにて放送中(夜9時より字幕版放送)