松坂桃李、次の一手は奇想天外ラブコメ!コロナ禍こそ「癒やしになるエンタメを」
爽やかな好青年からオタクにチャラ男など、作品ごとにさまざまな顔を見せる俳優・松坂桃李。そんな松坂が民放では約2年ぶりの連ドラ主演となる「あのときキスしておけば」(テレビ朝日系で4月30日スタート、毎週金曜午後11時15分~※一部地域を除く)では、内気で不器用な主人公を演じ、奇想天外なラブコメに挑む……。
松坂が演じる主人公・桃地のぞむは、優しい性格ながら、出世願望も恋愛願望もなく、休日は激ゆるのジャージで家にこもってひたすら大好きな漫画を読むことに明け暮れる32歳の青年。
ある日、勤務するスーパーでクレーマーに絡まれているところを、愛読漫画「SEIKAの空」の作者・唯月巴(麻生久美子)に助けられ、運命的な出会いを果たす。桃地は憧れの巴と距離を縮めていくが、ある大事件によって巴は帰らぬ人に……。なぜか井浦新演じる田中マサオという男性に魂が乗り移ってしまい、桃地は思わぬ事態に翻弄されていく。
松坂は、麻生演じる巴と井浦ふんするオジ巴という“二人一役”のヒロインと対峙する。「麻生さんプラス、井浦さんという二人に、嵐のようにぶんぶん振り回される役なので、かなりカロリーを消費することになるだろうなと思いました」と台本の印象を述べる。
脚本は、「セカンドバージン」(2011)、「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018)など恋愛ドラマの名手と呼ばれる大石静。物語はファンタジック、奇想天外。その一方で、絶妙なリアリティもあり懐の深いオリジナル脚本だ。松坂自身も序盤でどこまで視聴者に説得力を持たせられるか……ということがカギと認識し、撮影に臨んだ。「亡くなってしまった女性の魂が、見知らぬおじさんに入り込むという、ある意味であり得ない設定。それを1話、2話でしっかりリアリティを持って提示する。そんな役割を担うのは初めての経験。かなり難易度が高かったです。あと、この作品では桃地のモノローグがかなり多いのですが、ここまでのボリュームは初めてでした」
松坂にとって新たなチャレンジとなるが、大きな助けとなったのが井浦の芝居だったという。「麻生さんが演じていた巴を、井浦さんが見事に表現しているので、最初は『そんなわけないだろう』と訝しがっている桃地が、自然と『この人は巴さんなのかもしれない』と思える気持ちの変化に嘘っぽさがないんです。僕にとっては大変心強いヒロインであり、パートナーであります」と絶大な信頼を寄せている。
作品ごとに役柄の幅を広げている松坂。世代を代表する俳優として高い評価を受けているが、これまであまり縁のなかったラブコメに挑戦している。
「ここ最近、メッセージ性が強い作品に出演することが多く、『どのような反響が広がるんだろう』という興味から入ることが多かったのですが、今のコロナ禍で閉鎖的な生活を余儀なくされることにより、エンターテインメントがいかに人の心の癒やしになっているのかを改めて実感したんです。もちろん重厚なメッセージ性のある作品もやりがいがあるのですが、いまはこの物語のような心の風通しができるような作品をやらせていただきたいと強く思っている自分がいます。その意味でも、とても良いタイミングでこの作品に出会えたことに感謝しています」
ラブコメというジャンルに加え、桃地というキュート、可愛いキャラクターも、松坂にとっては新鮮なイメージだ。「巴さんと桃地はかなり年が離れた設定。年上の女性から見て、おろおろモジモジしている年下の男性は、可愛く見えた方が、関係としてはより説得力があると思うので、この作品で僕に対して、可愛いとかキュートというイメージを持っていただけるなら、それはとても幸いなことです。今後の役に対しても生かすことができそうですし、視野も広がると思います」と新境地に期待をのぞかせる。
本作では松坂、井浦という180センチ超えの“大型俳優”同士の恋を描く点も特徴の一つだ。松坂は同局の土曜ナイトドラマ枠で話題を呼んだ「おっさんずラブ」シリーズ(2018・2019)を引き合いに出し「田中圭さんと吉田鋼太郎さんとは違った新しい見え方というか、今までにない“大型”コンビを視聴者がどのように受け止めるのか……ということにも興味があります」とオンエア後の反響にも注目していた。(取材・文:磯部正和)