尾野真千子、コロナ禍での懸命な撮影を振り返り涙…「私にとって最高の作品」
女優の尾野真千子が20日、TOHOシネマズ川崎で行われた映画『茜色に焼かれる』公開前夜最速上映会の舞台あいさつに出席し、コロナ禍という厳しい状況のなかで公開を迎えた同作について「命懸けでやりました。コロナ関係なく言います。劇場で観てほしい」と涙を浮かべつつ呼びかけた。壇上には尾野と共に和田庵、片山友希、石井裕也監督も登壇した。
尾野真千子、和田庵、片山友希、石井裕也監督が思いを語る【写真】
本作は、生きづらい世の中で時代に翻弄(ほんろう)されてきた良子(尾野)が、愛する中学生の息子(和田)と共にたくましく生きていく姿を描く人間ドラマ。昨年の撮影時からコロナ禍で制作が進められ、感染対策に細心の注意を払いつつ、当初の予定通り5月21にから公開することを決定したという。
本作について、今の時代だからこそ必要なメッセージがたくさん詰まった作品であるという思いを胸に撮影に挑んで来たという尾野。「公開をこんなに嬉しく感じる作品も久しぶり。公開できることがとても嬉しいです」と感慨深げ。オファーを受けた時は「台本に今自分のやらなきゃいけないことがたくさん詰まった、魅力的な作品だと思った」そう。「そして「この作品は私にとって最高の作品です」と胸を張る。
尾野は撮影時を振り返って「こんな状況では、もう私たちの仕事はできないかもしれないと恐怖も襲ってきた。でも、みんなとこういう作品を伝えなければいけない、それは私たちの使命だと思ってみんな命がけでやっていた」とキャストやスタッフたちの思いを紹介。続けて「コロナ関係なく言います。劇場で観てほしい。怒られるかもしれないけど、みなさんと手と手を取り合って、観に来てほしい。それくらいみんなで命をかけて撮った作品なんです」と客席に呼びかけ、大粒の涙をこぼす。「すみません、泣いてしまって。でも、みんなが笑顔で劇場に来てくれるよう祈っています。コロナに負けるな。頑張ろう」と声を振り絞って呼びかけ。大きな拍手を浴びた。
石井監督は「(コロナ禍の)今だからこそ作るべき映画だと思った」と思いを明かし、「こういう状況だけど公開するべきだと思っていました。東京では舞台あいさつもできなくて、川崎で……。いろんな矛盾もあって、いろんな感情が交錯したりしていました。こんな舞台あいさつは人生で初めて」と語った。
尾野に対しては「生きるのが苦しい辛いというのは、誰でも言えること。その中で希望のようなものを見出すのが表現者としての仕事。少しでも前向きな作品になっているとしたら、それは尾野真千子さんという存在のおかげ。この人にしかできない役だったと思っています」と改めて感謝の気持ちを述べた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『茜色に焼かれる』は5月21日より全国公開中