佐藤健『るろ剣』アクションに限界なし

　大ヒットシリーズのフィナーレを飾る映画『るろうに剣心　最終章 The Final』『るろうに剣心　最終章 The Beginning』で、過去作をさらに上回る超絶アクションを魅せた主人公・剣心役の佐藤健。パート1からメガホンをとる大友啓史監督と谷垣健治率いる世界的アクションチームとともに異次元のアクションに挑み続けた佐藤が、限界突破の撮影現場を振り返った。

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　2部作となる本作は、和月伸宏のコミックを実写映画化したシリーズの完結編。新田真剣佑が演じるシリーズ最恐の敵・雪代縁との戦いを描く『The Final』、有村架純演じる剣心が自らの手で斬殺した妻・雪代巴との出会い、そして剣心の頬に刻まれた十字傷の謎に迫る『The Beginning』がどちらも公開中だ。

■アクションコンセプトは「前作を超えろ！」

　『The Final』では、姉・雪代巴（有村）を死に追いやった剣心に対して復讐心を燃えたぎらせる弟・雪代縁（新田）が猛威を振るい、『The Beginning』では、今まで描かれなかった人斬り抜刀斎として生きる剣心の戦いの日々を描いているが、いずれも過去3作品を超える激しいアクションが展開する。特に縁との壮絶バトルに主体を置いた『The Final』は、ドニー・イェン作品などのスタントコーディネーターとしても活躍する谷垣健治アクション監督率いるアクションチームが、またしても新境地を拓いた。

　佐藤いわく、「毎回、撮影の数か月前からアクションの基礎練習をゆるゆるとはじめて、徐々に『るろうに剣心』独特の動きや感覚を呼び覚ましていく」のだとか。さしずめプロ野球のオープン戦といったところだが、それ以外にも、木刀で素振りをしたり、走り込みをしたり、とにかく地道に体を起こしていく。そして、同時に時間をかけて構築していくのが、本シリーズの命とも言えるアクションプランだ。「アクションチームのスタッフが谷垣さんに新しいプランをどんどん提案し、その中でいいものがあれば最終的に大友監督に提案するんですが、毎回決まっているのは、『前作を超えろ！』というコンセプトなんです」

■前作のアクションをアップグレード

　今回は、これまでの経験値を踏まえ、佐藤も自分なりの意見を積極的に提案した。「僕がずっと主張していたのは、無駄にアクションシーンが長くならないこと。油断するとアクションって観客にとって“待ち”のシーンになってしまうと思っていて、それは絶対にしたくない。待っているくらいなら、一撃で決着するくらいのスピード感がいいと思ったので、そういうところはどんどん排除しましょうと。もしかすると、『佐藤はアクションやりたくないのかな？』って思われていたかもしれませんが（笑）、そこだけは言わせていただきました」

　佐藤の提案がいかに的を得ていたか、本編を観ればわかると思うが、マシンガンのように繰り出される濃縮アクションは、まさに前3作で経験したことのないスピード感あふれる世界を提示した。「毎回、アクションチームがド派手なプランを練ってきてくれるんですが、どんどんハードルが上がっていて、演じる僕たちはひたすら限界に挑戦する日々でした。例えばパート1の時に“ドリフト走り”と呼ばれる低い姿勢で走るアクションがありましたが、今回はそのまま屋根に登ろうとか、さらにそれを2回連続でやってみようかとか、屋根を走って、そのまま違う屋根に飛び移ろうとか……今までのアクションをベースにさらにもう一段階アップグレードする、その連続でしたね」

　話を聞いているだけでたじろいでしまうが、正直、音を上げたことはないのだろうか。「難易度が高いなと思うことはあっても、音を上げたことはありません。『るろうに剣心』をやる以上、挑戦あるのみですから。例えば、敵に斬り込まれたり、物が落ちてきたり、ギリギリのところで避けなければならないシーンもたくさんありますが、見応えのある映像を作るためなら多少当たるくらいの勢いでやりたいし、逆にそれくらい強い要求を出してくれないと演じる僕たちも気合いが入りませんから」と目を輝かせた。

　2部作となる最終章は、シリーズのフィナーレを飾るにふさわしく、度肝を抜くハードなアクションがさく裂する。ただ、忘れてはならないのは、その一つ一つの動きが、雪代巴という存在をめぐる“感情”から沸き起こっていること。だからこそ、今回のアクションシーンは強力な吸引力を持ち、観る者の魂を激しく揺さぶるのだ。（取材・文：坂田正樹）

『るろうに剣心　最終章 The Final』『るろうに剣心　最終章 The Beginning』は公開中