村上虹郎『るろ剣』佐藤健との対峙はギリギリ!
現在公開中の映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。佐藤健ふんする緋村剣心が、人斬り抜刀斎として新時代のため、幕府要人を暗殺するなか、出会ったのが新選組の沖田総司。演じるのは若手実力派俳優の村上虹郎。撮影後「まだまだ物足りなかった」と語った村上が、アクションへの意欲が増したという撮影を振り返った。
『るろうに剣心』シリーズと言えば、規格外のアクションシーンが大きな魅力の一つ。先に公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』では、剣心と雪代縁(新田真剣佑)のダイナミックなアクションに度肝を抜かれた人も多かったのではないだろうか。
続いて公開された『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では一転、剣心が人斬りから「不殺(ころさず)」の誓いを立てるきっかけとなった女性・雪代巴(有村架純)との切ない人間物語が展開する。当然、劇中はこれまでのシリーズとは違い、登場人物の感情をフィーチャーしたシーンが多い。
そんな静謐な雰囲気が漂うなか、良い意味で異質な空気をもたらしたのが、剣心と沖田の戦いだ。そこには、これまでの『るろうに剣心』のアクションとは明らかに異なる緊張感がほとばしっている。
村上は「この時代の剣心は人斬り抜刀斎として、逆刃刀ではなく真剣で戦っている。ちょっとでも刀が身体に触れたら即勝負が決まってしまう」と戦いの意味を述べると「原作の『るろうに剣心』における新選組、そして沖田総司は、活躍の場が決して多くはないのですが、台本を読んでアクションがあると知って、メチャメチャ嬉しかった」と笑顔を見せる。
劇中、沖田の登場シーンは少ないが、剣心と剣を交える場面でのカット数は30を超える。メガホンをとった大友啓史監督は「より時代劇的な殺陣」と話していたが、村上も「『るろうに剣心』の殺陣というと、アクション的な要素が強いと思いますが、沖田と剣心のシーンは斬り合いという言葉がぴったりだと思います」と語る。
村上の相手は、10年に渡りシリーズを支えてきた佐藤。相手にとって不足はないどころか、あまりにも巨大な壁だ。しかし大友監督は「まったく臆していなかった」と村上の度胸を絶賛していた。
村上は「この作品のお話をいただいたとき、もちろん本気で殺陣練習をしましたが、正直10年命をかけて剣心に向き合っている健くんに追いつけるわけがないんですよね」と白旗をあげる。しかしそこで、村上は沖田という人物のメンタリティーを考えた。「諸説ありますが、僕は沖田って純粋に剣の交じり合いをしたいと思っている男だと感じたんです。ある意味で人斬りである抜刀斎と近しい匂いを持つ男……そんな沖田の精神面を自分のなかに取り込めば、対峙できると思ったんです」
沖田として向き合えば、圧倒的な存在感で攻めてくる剣心を演じる佐藤にも負けずに対峙できる。そんな思いを拠り所に向き合った。それでも村上は「やっぱり冷静に考えて、健くんは運動神経が半端ないし、最初は立ち合いが早すぎて見えなかったぐらいで。本当にギリギリどうにかなったぐらいの感じです」と佐藤の身体能力に脱帽していた。
大友組はキャストスタッフふくめ、すべてがプロフェッショナルな撮影現場だった。貴重な体験で、「正直、全然やり足りなかったです」ともっと長い時間、撮影現場を味わいたかったという村上。「実は『るろうに剣心』の撮影と並行して、『燃えよ剣』という映画で岡田以蔵を演じていたんです。以蔵と言えば、健くんが『龍馬伝』で担当していた役でもあり、なんかすごく縁みたいなものも感じましたし、同じアクションでも作品が違えば、表現もまったく違う。すごく充実した時間で、アクション意欲がどんどん掻き立てられています。『早く次の作品来い!』という感じです」
『るろうに剣心』シリーズがスタートしたとき、村上はまだ高校生で、芸能界に入る前だった。原作も知っていた村上少年は「『おろ?』を健くんにとられたって思っていました(笑)」と語っていたが、そんなシリーズのラストに自身が参加することになった。「この業界に後から入った人間からすると、常に自分がテレビや映画で観ていた人とご一緒することってなんか不思議な感覚なんですよね」と話していた村上だったが、彼が『るろうに剣心』シリーズに、とてつもなく大きなインパクトを与えたことは間違いない。(取材・文:磯部正和)