『オノダ(原題)』小野田役の2人、10キロ以上の減量で挑んだ
第74回カンヌ国際映画祭
現地時間8日、第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品である『オノダ(原題)』の公式記者会見が行われ、現地入りしているアルチュール・アラリ監督に加え、新型コロナウイルスの感染症対策のため、カンヌ入りが叶わなかった主演の遠藤雄弥と津田寛治が、特例としてリモートで参加。「カンヌに来られたんだなと思えて、幸せな気持ち」(津田)「画面越しですがスタッフに会えてうれしい」(遠藤)と喜びの声を届けた。
本作は、太平洋戦争後、約30年の間、任務解除の命令を受けられないまま、フィリピン・ルバング島で過ごした一人の日本兵・小野田寛郎旧陸軍少尉の実話を基に、壮絶かつ孤独な日々を描いた人間ドラマ。フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の合作で、フランスの新鋭実力派アラリ監督が、日本人キャストを全てオーディションで選考し、2018年12月から2019年3月まで、カンボジアのジャングルで過酷な撮影に挑んだ。遠藤が青年期の小野田を、津田が成年期の小野田をそれぞれ演じている。
会見で、記者から「自在した小野田さんに容姿がそっくり」と賞賛された津田は、幼少期、実際に帰還の様子を見ていたようで、「母から、戦争が終わったことを知らずにジャングにいた人と言われた。本当にビックリした。でも、今作で資料などを読み、あの高度経済成長期時代に大和魂を持って帰ってきたと知って感動した。だから誇りをなくさないように小野田さんを演じました」と熱弁。約1年かけて13キロの減量をして撮影に挑んだことを回顧した。一方、遠藤も「11キロ痩せて現場に行ったら、監督に痩せ過ぎと言われて。ピーナツバターや食パンを毎日食べて体型を調整した」と壮絶な役作りを明かした。
また、「日本からどうしても伝えたいことがある」と津田が語りだしたのは、日仏の撮影現場の違い。津田いわく、「日本の映画界では、撮影が始まる前に資金が調達できずに撮影までいかない企画もあり、撮影が始まったとしても途中でお金がなくなって完成できないというような映画がたくさんあります。私がこの映画に参加した時に驚いたことは、フランスの映画の制作の現場が日本と大きく違うところ、撮影の環境です。この作品の現場ではケータリングが出て、スタッフもキャストも同じ暖かい食事を一緒に食べるんです。なんと、彼らは撮影中も週休2日制なんです! そして、撮影現場に自分たちの子供や家族も連れてくるんです。最後には、彼らは2週間ごとに家族を交えて撮影現場でパーティー(みたいなもの)をしているんですよ。楽しいじゃないですか(笑)。日本もそういう映画の制作現場が増えたらいいなと思います」とユーモアを交えた意見を述べ、会場のメディアからも拍手が起こった。(高橋理久)