『竜とそばかすの姫』にもクジラが!細田守作品共通のモチーフが続々
現在公開中の細田守監督の新作アニメーション映画『竜とそばかすの姫』には、これまで多くの細田作品を彩ってきたクジラが登場。スクリーン一杯に広がる巨大サイズのものから、「こんなところに!」と意外なところにも見られる。
アカデミー賞長編アニメ賞ノミネート作『未来のミライ』(2018)以来の新作となる本作は、幼いころに母を亡くし、今は高知の田舎町で父と二人で暮らす17歳の内藤鈴(すず/声:中村佳穂)を主人公にした物語。仮想世界<U(ユー)>に<As(アズ)>と呼ばれる自分の分身・歌姫「ベル」として参加し、封印していた歌声を再び披露したことで世界の注目を浴びる彼女と、皆に忌み嫌われる竜の姿をした謎の存在(声:佐藤健)との出会いが描かれる。
細田作品のトレードマークの一つとして親しまれてきたのが、クジラ。『時をかける少女』(2006)では最初のタイムリープのシーンでクジラらしきものが。『サマーウォーズ』(2009)では仮想世界OZの守り主として(名前はジョンとヨーコ)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)では「ともだちは海のにおい」(著:工藤直子/絵:長新太)という絵本に。『バケモノの子』(2015)では渋谷の街に巨大なクジラが現れ、『未来のミライ』では4歳児のくんちゃんがいたずらで妹のミライちゃんの顔に置くおかしがクジラ型だった。
『竜とそばかすの姫』では仮想世界<U>に大小、複数のサイズのクジラが存在。冒頭の歌姫ベルの登場シーンでは、ステージのように思われたものが巨大なクジラだった。一方、現実世界でも、すずの親友ヒロちゃん(声:幾田りら)のノートにさりげなくクジラ(潮を吹いている)のイラストが描かれていたりする。
なお、クジラのほかにも『時をかける少女』以降の共通のモチーフとされているのが「本棚」と「桃」。『竜とそばかすの姫』ではすずの父(声:役所広司)が桃をもらってくる描写があり、すずがその桃でピーチティーを作って同級生の人気者ルカちゃん(声:玉城ティナ)に振舞うシーンが。本棚はすずの部屋に見られる。
掘れば掘るほど発見がある楽しみも、細田作品が長く親しまれる理由の一つではないだろうか。(編集部・石井百合子)