多忙な松坂桃李が今、思うこと 30代中盤から目指したい新たな挑戦
2018年に公開され大きな反響を呼んだ『孤狼の血』。その続編となる『孤狼の血 LEVEL2』(公開中)で、裏社会を取り仕切る主人公の日岡刑事役で鬼気迫る熱演をみせた松坂桃李(32)。今年は映画だけでも4本の出演作が公開される彼が、現在の忙しさをふまえたうえで、今後の俳優としての方向性について語った。
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2021年はすでに『あの頃。』『いのちの停車場』が公開。4~6月の同クールに「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK)と「あのときキスしておけば」(テレビ朝日系)と主演ドラマが2作放映され、まさに“出ずっぱり”状態の松坂だが、当の本人は多忙を極めているのか、それともたまたま出演作が公開ラッシュになのか。聞いてみると「確かに、あまり休んでないですね」と笑う。
『孤狼の血』第1作が公開されたのが29歳のとき。そこから3年を経て、現在32歳。この「30代」が松坂桃李にとってキーポイントになっているようだ。「前作の後、30代を迎えてからは、40代への挑戦を見据えて仕事をしようと考えています。できるだけ、幅広いカテゴリーで多様な作品、そして多くの監督と仕事をしていくことで、40代の仕事につながると信じています」と、ワーカホリックと言っても過言ではない近年に思いを巡らせる。
ただ、自身でもこのハイペースがずっと続けられるとは思っていないという。「年齢を重ねたとき、スピード感だけで進んでいくと体力的にきつくなるだろうし、どこかでペースを変えていかないと、うまく(仕事と仕事の)スイッチの切り替えができなくなるかもしれません。体力だけじゃなく、メンタル面で急にガクンと落ちる可能性もある。ですから30代中盤からは、もう少し1本1本の作品に時間をかけて取り組んでいけたらいいですね。それも僕の中では、ある種の“挑戦”です。ペースを変えてどんなことが起こるのか、想像できないぶん、楽しみです」
インタビューにも誠実に向き合い、よく整理された答えを発する松坂だが、その点を伝えると「いや僕、トークは得意じゃないですし、切り返しも下手。もっと面白い人がたくさんいるでしょう?」と謙遜する。しかし、だからこそ演技の仕事を続けているのだという。
「俳優というのは自分の言葉ではなく、作品でメッセージを伝える仕事だと思います。こうして仕事を続けていると、メッセージが強い作品や、観た方が気持ちよく劇場を後にする作品とも巡り会うことができます。そこが、(トークが苦手な)自分のライフスタイルに合っているんじゃないでしょうか」
『孤狼の血 LEVEL2』は、コロナ禍による撮影中断を経ての公開。改めて俳優の仕事に対する思いを強めたようで、こんな言葉が出てきたのかもしれない。
本作の後も、『ヒメアノ~ル』『犬猿』などの吉田恵輔監督、古田新太共演による『空白』が9月23日に公開を控える。この作品も「挑戦」にふさわしい役どころだ。さらに『悪人』『怒り』などの李相日監督と組み、広瀬すずとダブル主演を務める『流浪の月』(2022年公開)、コロナ禍で延期になっている実写版『耳をすませば』を控えるなど話題作が途切れない。ファンにとっては、ハイペースな仕事ぶりがうれしいが、数年後、その言葉どおり、時間をかけて取り組んだ渾身作でメッセージを届けてくれる松坂の姿も、また楽しみである。(取材・文:斉藤博昭)