『シャン・チー』監督、マーベルに「ドラゴンボールZ」の映像を使ってプレゼンしていた
マーベル・スタジオ最新作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(全国公開中)のメガホンを取ったデスティン・ダニエル・クレットン監督が、日本のアニメを用いたマーベルへのプレゼン内容や、コロナ禍での撮影について、アジア各国メディア向けのプレスデーで語った。
【画像】マーベル映画でかめはめ波を再現?監督が大好きな「ドラゴンボールZ」
『ショート・ターム』『ガラスの城の約束』『黒い司法 0%からの奇跡』などドラマ性に優れた作品を生み出してきたデスティン監督は、本作でカンフーアクションを駆使して戦うマーベル・ヒーローの誕生秘話に挑戦。アジア系ヒーローを描くことから、企画段階から「とてもパーソナルなピッチだった」と振り返る監督は、アニメを含む好きな日本・中国・韓国映画のビジュアルを用いて、マーベル・スタジオにプレゼンテーションを行った。
「私が望む映画がどういったものになるのか、それがどんな感じで映像化されるのか、映画の核となる家族のドラマについて話しました。過去に製作された多くの映画に敬意を払う必要性や、作品のトーンについても伝えています。私たちは、人生の痛みを伝えながら、同時に身近にある人生のユーモアを届けるトーンがほしかった。少なくとも私の人生においては、家族に多くの痛みがある時は多くの笑いも存在していましたし、この映画でそういった側面を全て見せるようにしました」
日本映画やアニメを観て育ったデスティン監督は、大人気アニメ「ドラゴンボールZ」で主人公・孫悟空がかめはめ波を放つ映像をマーベルとのプレゼンで使用。実際に、本編でも同作にオマージュを捧げたシーンが存在するという。「私は『ドラゴンボールZ』を観て育ちました。孫悟空がかめはめ波を繰り出すクリップを、(プレゼン用資料の)一つとして見せたんです。『ドラゴンボールZ』では、悟空がかめはめ波を放ち、相手もそれに負けないパワーで互角の戦いが続くシーンがあるのですが、そのシーンは間違いなく『シャン・チー』のインスピレーションとなったものの一つです」
本作は新型コロナウイルスによるパンデミックの間で撮影され、デスティン監督が自主隔離に入ったことで、第1班の撮影が一時休止する事態も起きた。ニューノーマル下で全く新しい撮影方法を模索する必要があった監督は、キャストやスタッフはもちろん、エキストラも密にならないように撮影を乗り切った。
「一つ簡単な例を挙げると、ファイトクラブにあるリングの周りを囲むエキストラをワイドショットで映すシーン。シュー・ウェンウーの部隊が襲撃をかけると、全員が一気に混乱するのですが、私たちはそれを4つの違うパス(同じショットを4回にわけて撮影)で、エキストラを毎回(違う場所に)配置して撮影しないといけませんでした。(コロナ禍で)一度に多くの人を撮影現場に入れることができなかったので、後からVFXで映像を合成しています。私たちが安全に撮影するために必要だったトリックの一つです」
犯罪組織で鍛え上げた最強の力を封印したシャン・チー(シム・リウ)が、力による世界征服を目論む父シュー・ウェンウー(トニー・レオン)と再び向き合う、親子の物語も見どころの一つ。何世代にもわたるシャン・チーの家系を掘り下げることは「重要なことでした」と明かすデスティン監督は、「本作を単なるスーパーヒーロー映画やアクション大作にしたくはなかった。この映画を観た時、エンターテインメント以上の何かを得られるように製作しています。観客が映画館を出たらすぐに、母親に電話して『ありがとう』と言いたくなったり、周りの家族に対して感謝の気持ちを感じることができたなら、私はハッピーです」と笑顔で語っていた。(編集部・倉本拓弥)