瀧内公美、“自主映画”の飛躍に感激 言葉詰まらせる
俳優の瀧内公美が18日、都内で行われた映画『由宇子の天秤』（公開中）の舞台あいさつに登壇。“自主映画”ともいわれる本作が大きく羽ばたいたことに感激していた。この日は、河合優実、梅田誠弘、光石研、春本雄二郎監督も来場した。
本作は、社会の情報化が急速に進む中、誰にでも降りかかる可能性がある困難を描く人間ドラマ。自身の仕事に確固たる信念を持つドキュメンタリーディレクターの由宇子（瀧内）は、ある日、父親の政志（光石）が思いがけない行動をとったことにより、その信念が大きく揺るがされる。
瀧内は、3年前に春本監督の『かぞくへ』を劇場で鑑賞した際に感動して大号泣し、直接プロフィールを渡して「ご一緒したい。次撮る機会があったらお願いします」とアプローチをかけたことを打ち明ける。
その願いが叶って瀧内が主演をつとめた本作を、春本監督は自ら製作費を集めたことから「自主映画」改め「独立映画」と表現する。これまで、助監督として商業システムの中で活躍してきた春本監督は、常々、有名な小説やアニメを原作にしたり、すでに認知を獲得した役者やアイドルなどを起用したりしないと映画が製作できないこと、さらに、彼らに対して忖度した脚本を作らなければいけないことに「表現が殺されている」と違和感を覚えていたそうで、「自分が監督をするときは、そういう体制でやりたくないという一心から、助監督を休んで、貯めたお金で作りました」と情熱をたぎらせる。
そのため、スタッフも総勢15名ほどだったそうで、瀧内は「監督が助監督もチーフもセカンドも全部やるので、カチンコ落として『クソッ！』と言っていることもあって、本当に大変だったと思います」と思いやった。一方で、「光石さんは、『お金あるから、ご飯食べなさい』と何度もごちそうしてくださいました」と感謝。河合も、光石が「金ならある」と言っていたことを暴露して会場の笑いをさらった。
そんな光石は、撮影中のモチベーションは「監督の熱だった。やっていると、俳優陣も応えないと（という気持ちになった）」と話す。また、劇中で音楽が使用されていないため、「俳優にとってのかせみたいなものがないと、さらされた感じで、ものすごくヒリヒリするぜと思って（試写を）観ていました」と苦笑いを浮かべた。春本監督は「音楽をつけることで、『ここではこういう感情になってください』とわれわれの視点が一元化される。でも、作り手の考え方を押し付けるのは違う。映画は、皆さんが想像する楽しみが一番なので、押し付けは表現者のエゴだと思う。だから、音楽をつけずに芝居と演出と脚本で見せる。それをモットーにしました」と力を込めた。
第25回釜山国際映画祭ニューカレンツアワード受賞など、国内外で高い評価を得ている本作。イベントの最後、瀧内は「わたしは、この木下由宇子という人間に出会えて本当に幸せでした。すごく大変なこともありましたし、監督にご迷惑をおかけしましたけど、この自主映画がいろんな人に宣伝してもらって、こんなに大きくなったことがうれしいです」と、言葉を詰まらせながら、喜びを語った。（錦怜那）