「青天を衝け」福士誠治、吉沢亮は「気持ちで返してくれる」役者 初大河で井上馨好演
現在放送中の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)で、明治新政府の大蔵大輔(だゆう)・井上馨を演じる俳優の福士誠治。福士にとっては本作が初の大河。個性的な人物が数多く登場する「明治政府編」のなかでも、井上は、吉沢亮演じる主人公・渋沢栄一に無理難題を吹っ掛け実行させる豪放磊落(ごうほうらいらく)な人柄で物語に彩りを添える。渋沢とは「雷親父と避雷針」と言われるほどの名コンビぶりを見せる井上を演じた福士が、役へのアプローチ方法や吉沢ら共演者との撮影エピソードを語った。
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井上馨の声が大きい理由
井上はイギリス公使館焼討ちに参加するなど、尊王攘夷の志士として活動していたが、山崎育三郎演じる伊藤俊輔(のちの博文)らと共にイギリスへ留学したことから開国派に転じ、維新後は大蔵省に従事。伊藤や渋沢と交流を深める人物だ。
福士は井上に関して「本格的に物語に登場するのが明治時代になってからということで、洋装で現代人ぽい佇まいですが、武士道みたいなところは常に心にあった人物」と解釈したという。性格的には「ある意味で鈍感。周りの空気を読まず、自分のペースで突き進んでいくタイプ」と位置づけると「渋沢に対して、いろいろと無理難題を吹っ掛ける強引な人物。渋沢という男をどのように動かしたら面白くなるだろうか……と考えながら演じています」と役へのアプローチ方法を語る。
伊藤とは長州時代から行動を共にする盟友。山崎は以前のインタビューで井上に対して「声がでかくて暑苦しい感じ」と評していたが、福士は「そこは意識していました」と笑うと「政治家なので表に出さない信念や野心みたいなものは秘めていたと思いますが、裏表があるような人間にはしたくなかった。その意味で、井上が発する声からまっすぐさが伝わってほしいと思っていました。だからこそ声が大きいというのは大事な表現だったと思います」と説明する。
吉沢亮は「芝居を気持ちで受け、返してくれる」
「渋沢に無理難題を吹っ掛ける」という福士の言葉通り、井上と渋沢の関係性は「雷親父と避雷針」と言われていた。まさに井上の無茶を受け止める渋沢という構図は、作品の大きな見どころでもある。
福士は「僕は吉沢亮という俳優のファンなんです」と言い、「(栄一に)無理難題を吹っ掛けるシーンで、テストのとき以上に豪快な芝居をしたのですが、吉沢くんもそれに合わせてお芝居が変わってくるんですよね。きちんと気持ちでお芝居を受けてくれて、しっかり気持ちで返してくれる。一緒に演じていて心地が良いです」と吉沢の芝居を称賛する。
さらに福士は「ここまで大河ドラマを引っ張ってきた渋沢としての吉沢亮くんの背中はとても大きく、とても助けられています」と吉沢の座長としての存在感にも感服していた。
初大河同士の山崎育三郎に仲間意識
一方、山崎との共演については「伊藤と井上が船の上で英語を話す場面(6月6日放送の第17回『篤太夫、涙の帰京』)が始めての共演シーンだったのですが、お互いにあの場面が大河ドラマ初シーンでした。僕は“育ちゃん”と呼ばせてもらっているのですが、二人で『大変だね』と言いながら撮影を進められたので、仲間意識を持つことができました」と作品さながらの関係性を築けたという。
伊藤と井上のシーンは今後も登場するようで「井上の方が年上なのですが、いい意味で年上を手玉に取る伊藤と、そのことに気づいていない井上の、何とも言えない親友感のような関係性にも注目してほしい」とのこと。
約260年にわたって続いた江戸幕府が崩壊し、新時代に突入した。福士は「位置づけでは時代劇なのですが『明治政府編』に入ると、途端にいま使われている言葉が増えてくる」と台本について触れると、 「飛脚」から「郵便」に変わった経緯や、紙幣や銀行ができたあらましなど、福士自身も「歴史の授業とは違う視点で知識を吸収できる。そんな作品に自分が参加しているということに興奮しています」と撮影を思う存分楽しんでいるようだ。
今後の展開について福士は「井上はガサツで自分本位なところもありますが、それだけではなく、視野が広く人間味溢れる『井上も社会に貢献したんだぞ』という部分を観てほしいです」と見どころを語った。(取材・文:磯部正和)