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TRIGGER大塚雅彦監督『スター・ウォーズ』アニメでマスター世代を実感 引退示唆の思い

『The Elder』よりタジンとダンが遭遇する老人の正体とは?
『The Elder』よりタジンとダンが遭遇する老人の正体とは? - (C)2021 TM & c Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 日本を代表するアニメーションスタジオが、『スター・ウォーズ』シリーズの世界観を独自の視点で映像化する短編アニメ映画集『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の一編『The Elder』を手掛けたTRIGGER(トリガー)の大塚雅彦監督が、シリーズへのあふれる愛と共に、監督引退を示唆した同作に込めたメッセージを語った。

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 大ヒット作『プロメア』など、独創的なオリジナルアニメで知られるTRIGGERの代表を務める大塚監督にとって、「スター・ウォーズ」は、輝かしいキャリアを誇る映像の世界を志すきっかけになった作品。今回のオファーについても「僕が『スター・ウォーズ』好きだっていうのはスタジオのみんなが知っているので、もうやるでしょ、という感じで誰も文句は言えなかったですね(笑)」と振り返る。

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 コンペには3本の企画を提出し、大塚監督の『The Elder』と今石洋之監督の『THE TWINS』が採用された。『The Elder』は、辺境の惑星に降り立ったジェダイマスターのタジンとパダワンのダンが、怪しい気配を放つ老人と対峙(たいじ)する物語。時代劇を思わせる雰囲気のなか、違う世代を生きてきた剣士たちのライトセーバーバトルが、リアルな世界観で描かれる。

 「根底にあったのは、いつか『スター・ウォーズ』のような雰囲気を持った時代劇をアニメでやりたいというアイデア。ずっと"やりたいことリスト"の上位にあって、企画会議に出したりしてもなかなか実現しなかったものです。そのまま時代劇にすると『スター・ウォーズ』ではなくなってしまうので、あくまで時代劇ふうの作品として、ずっとやりたかったことを落とし込みました」

 若きパダワンを諭すマスター・タジンの姿は、スタジオで若手の育成にも取り組む大塚監督と重なる部分も。「自分のなかではずっとパダワンの気持ちだったんですけど、若手にいろいろ指導をしたりと、気が付いたらマスター的なことをやっていた。そういう自分の感覚がうまく作品とリンクしたなと思います」という大塚監督は、「プロットを書きながら、タジンの気持ちがわかるなと感じていました。年齢的に近いこともあって、自分はもうマスターなんだなと、作りながら思い知った次第ですね(笑)」

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 そうした若い世代への思いは制作体制にも表れたようだ。大塚監督は今回、作画監督をベテランアニメーターの赤堀重雄氏に依頼。今石監督の『THE TWINS』がダイナミックなアクションが特徴だとすれば、『The Elder』はリアリティーを重視する作風を取った。「正統派な作画監督でもある赤堀さんの特性を生かすためにも、リアルな表現の方がうまくいくのではないかと思いました。トリガー的に言えば、『THE TWINS』はいつものスタッフが中心。『The Elder』は超ベテランの赤堀さんに初めてお願いした。若いアニメーターにとって刺激になったのではないかと思いますし、新しい体験になってくれていればいいなと」

トリガーは『プロメア』を手掛けた今石洋之監督の『THE TWINS』も発表(C)2021 TM & c Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 大塚監督と「スター・ウォーズ」の出会いは中学生のころ。「ノベライズ版の『スター・ウォーズ エピソード4:新たなる希望』の表紙を書店で見たのが最初です。映画はアメリカ公開から日本に来るまで間が空くことになり、雑誌の特集などで周りが盛り上がるなかで、公開を待ち焦がれていましたね。そこから1年くらい後の夏、初日に観に行ったのが初体験です。ちょうど期末試験の日で、試験が終わってすぐ劇場に駆けつけました」

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 「その時、明確に映像の仕事をしたいと思ったわけではありませんが、そこから中学の3年間くらいで、そういう道に行きたいと決心していった。いわゆる、人生を変えた映画です。僕は娯楽としての映画が好きで、心のなかではずっと、『スター・ウォーズ』のようなエンタメ映画を作りたいと思ってやってきました。目標と言っていいくらいのものでしたね」

 そんな本作が、最後の監督作品になるかもしれないと明言している大塚監督。だが、『スター・ウォーズ』であれば話は別だ。「もしまた『スター・ウォーズ』のお仕事があったら、いろいろ撤回してやるかもしれません。今回、最後のダビング作業をルーカス・スタジオでやるはずだったのが、かなわなかったことだけが心残りで。向こうのスタッフに機会があったらまたと言われたので『またって言ったな!』と(笑)。チャンスがあればやりたいと思っています」(編集部・入倉功一)

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