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イザベル・ユペールが濱口竜介監督にハマったワケ タッグの可能性は?

第34回東京国際映画祭

イザベル・ユペール&濱口竜介監督
イザベル・ユペール&濱口竜介監督

 フランスの名優イザベル・ユペールと、『寝ても覚めても』『ドライブ・マイ・カー』などの濱口竜介監督が31日、東京ミッドタウン日比谷内のBASE Qホールで行われた第34回東京国際映画祭「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」に出席し、お互いの映画スタイルについて大いに語り合った。

【動画】是枝裕和監督がその才能に嫉妬した濱口竜介監督の新作

 国際交流基金が、第34回東京国際映画祭のプログラムの一環として、昨年に続いて行われた本企画は、是枝裕和監督を中心とする検討会議メンバーの企画のもと、アジアを含む世界各国・地域を代表する映画人と、第一線で活躍する日本の映画人が語り合うトークイベント。今年のテーマは「越境」。国境に限らず、さまざまな「境(ボーダー)」を越えることを含め、映画にまつわる思いや考えを存分に語り合う場となる。

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 トークの冒頭には、是枝監督のあいさつも行われた。是枝監督は、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した濱口監督の新作『偶然と想像』を、昨日東京フィルメックスのオープニングで鑑賞したことを報告。「今朝、起きてもまだ余韻を引きずっていて。映画っていいなとあらためて思いましたし、あんな風に映画が作れたらいいなと。作り手として嫉妬してしまうような映画でした」と称賛すると、「そしてこれはちょっと自慢ですが、この二人(イザベルと濱口監督)の組み合わせが面白いのではないかと提案したのは僕です」と付け加え、会場を沸かせた。

濱口作品への愛をさく裂させるイザベル・ユペール

 濱口監督の作品はほとんど観ているというイザベルが「その中で一番好きな映画を選ぶのはとても難しい。わたしにとって、濱口監督の作品を観るということは、強力な映画言語を発見するということ。そしてその映画言語で提供できる本質的な、そして一番重要なことを表現しているんです」と切り出し、濱口監督を絶賛。「それは偉大な映画作家にとってはつきものなのかもしれませんが、実に濱口監督は、映画にとって本当に根本的なことを把握しているように思います。つまり人が言葉で表現することと、沈黙の間に何が起きるのかということを表現している。わたしが最初に観た『ハッピーアワー』(2015)もそうでしたし、『ドライブ・マイ・カー』や『偶然と想像』もそうでした」と説明した。

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 その言葉を聞いた濱口監督は「脳がとろけるような気持ちでおります」と喜びを隠せない様子で、「イザベルさんのフィルモグラフィーは、映画史そのものだと感じます。自分自身は映画を監督で観る傾向がありますが、自分の好きな映画を観ると、そこにイザベルさんがいらしたという感じです」とコメント。その言葉通り、濱口監督はクロード・シャブロル、モーリス・ピアラ、ポール・バーホーベン、ホン・サンスなど、イザベルがこれまで組んできた巨匠たちとの仕事はどうだったのか、といった質問をぶつけ、イザベルの発言をひと言も逃すまいとばかりに真剣な面持ちで聞き入っていた。

 一方のイザベルも濱口監督の演出スタイルに興味津々のようで、次々と質問を投げかけていたが、中でも『ハッピーアワー』の4人の主要キャストがほとんど演技経験がないということに驚いた様子。「これはすごいことだと思います。プロの俳優にとっては悲しいことですが、本当に彼女たちが素晴らしい。彼女たちに女優という意識がないからイノセンスでいられるわけで。それはプロが身につけたいと夢見ているもの。アマチュアという言葉は“愛する”(aimer)から来ています。わたしはアメリカで(ハル・ハートリー監督の)『愛・アマチュア』(1994)という映画に出たことがありますが、アマチュアこそ愛することができるんです」と、詩的な表現で『ハッピーアワー』の女優陣を称賛する一幕も。

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 イザベルと濱口監督の互いへの興味が尽きず、トークショーは予定時間より30分近くオーバーする盛り上がりを見せた。最後に、濱口監督とイザベルとのタッグの可能性について質問された濱口監督は、「そういうことは二人に任せておいてください」とコメント、イザベルも「人前で結婚することはしたくないです」ウイットに富んだ表現で返し、会場を笑いで包んだ。(取材・文:壬生智裕)

第34回東京国際映画祭は11月8日まで日比谷・有楽町・銀座地区にて開催中

映画『偶然と想像』予告編 » 動画の詳細
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