伊藤健太郎、約2年ぶり映画主演 阪本順治監督が本人を当て書き
俳優の伊藤健太郎が、『半世界』などの阪本順治監督の新作映画『冬薔薇(ふゆそうび)』(2022年6月公開)で、約2年ぶりに映画主演を務めることが29日、明らかになった。阪本監督が伊藤をイメージして当て書きしたオリジナル脚本のストーリーで、伊藤は「スクリーンで芝居が出来ること、カメラの前に立てる事に感謝しかありません。観てくださる方々に何かしら受け取って頂けるような素敵な映画に必ずなります。どうか、劇場で見て頂きたいと思います」とコメントしている。
伊藤演じる主人公・渡口淳は港町で暮らし、専門学校にも行かず半端な不良仲間とつるみ友人や女から金をせびってはダラダラと生きる中途半端な男。両親は埋立て用の土砂を運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ましながらもなんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が発生し、思いもよらぬ犯人像が浮かび上がってくる。
撮影は今年11月に行われ、30日にオールアップ。完成は来春を予定している。伊藤は2020年10月に自動車運転処罰法違反及び道路交通法違反の疑いで逮捕されたのち不起訴処分となり、2021年10月末に上演された主演舞台「SOULFUL SOUL」で復帰した。映画主演は黒木瞳監督作『十二単衣を着た悪魔』(2020)以来となる。
主演の伊藤、阪本監督のコメント全文は下記の通り。(編集部・石井百合子)
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』は2022年6月、新宿ピカデリーほか全国公開
伊藤健太郎(主演)
阪本順治監督とは今作の本が出来上がる前に初めてお会いし、2時間くらい沢山の話をさせていただきました。監督に話した事が本に反映されている部分もあり、読んでいる時点で喜怒哀楽いろんな感情が僕自身の中に巻き起こりました。監督は、キャストに対してスタッフに対して作品に対して、本当に愛に溢れている方です。常に現場にいてカメラのすぐ横で僕達の芝居を見てくれていますし、いてくださるだけで本当に安心します。スクリーンで芝居が出来ること、カメラの前に立てる事に感謝しかありません。観てくださる方々に何かしら受け取って頂けるような素敵な映画に必ずなります。どうか、劇場で見て頂きたいと思います。よろしくお願いします。
阪本順治(脚本・監督)
脚本執筆以前、伊藤健太郎に逢い、生まれてからこれまでのことを、SNS上の噂も含め、あれこれと執拗に訊いた。云いにくいことも多々あったと想うが、彼は、なにも誤魔化さずに応えてくれた。そして、こんな感想を持った。伊藤健太郎は、笑顔を絶やさない賑やかなやつだが、それはもしかしたら虚像かもしれず、実像は、心に捻れをかかえ、戸惑いのまま生きている青年だ、と。だから、その性質を、脚本に生かそうと想った。彼は怒るかもしれないが、いまはまだ辺境をうろつき、誰かを待っている途上だ。俳優とは、自身の中に他者の居場所をさがす仕事だ。不遜な云い方だが、そのお手伝いができるとしたら、光栄だと想った。それは、彼のことを気に入ったからだ。それ以外、なにもない。彼はいま、撮影現場で、俳優としてだけでなく、余力あれば、スタッフとしても働いてくれている。