浅香航大『あな番』大反響に喜びも「新しい作品で更新していかなければ」
2019年4月から2クール連続で放送され大きな話題となった「あなたの番です」で刑事・神谷将人を演じた俳優の浅香航大。マンションの住人たちとは一線を画した立ち位置ながら、劇中では壮絶な死を遂げるなど、作品に大きな爪痕を残した。視聴者からの反響も大きく、街で声を掛けられることも格段に増えたようで「とてもありがたいですね」と語る一方で、「新しい作品で更新していかなければいけない」という気持ちも湧いてきたという。
劇場版の設定に「なるほどそうきたか!」
ドラマのオンエアが終わってから1年後ぐらいに『あなたの番です 劇場版』(公開中)が制作されるという噂を聞いた浅香。当時は、自身が演じた神谷刑事は死亡してしまったことから、「劇場版に出演できる人は『いいなー』という気持ちだったんです」と正直な胸の内を明かしたが、出演オファーが来て、ドラマ版とは違う世界線で繰り広げられる話という説明を受けたときは「なるほどそうきたか!」と期待に胸を膨らませたという。
劇場版は、ドラマで原田知世演じる菜奈と、田中圭ふんする翔太がマンションに引っ越してきた時点から、2年が経過したところからスタートする。いよいよ菜奈と翔太が結婚することになり、船上で開催される結婚パーティーにマンション「キウンクエ蔵前」の住民が招待されるという設定。そこで殺人事件が起こり、神谷刑事や水城刑事(皆川猿時)が捜査にやってくるという展開だ。
ドラマ終了から1年以上の時間が経過してからの劇場版クランクイン。神谷刑事というキャラクターを取り戻すための時間は「あまりかからなかった」そうだが、ドラマ版とは大きく異なっていることがあった。それはマンションの住民たちとシーンを共にすることが多かったこと。
「ドラマの住民会のシーンなども、ほとんど現場にいたことがないので、劇場版でマンションの住民がたくさん集まって右往左往するシーンなどは『こんな緊張感のなかでやっていたんだ』とか『みなさん和気あいあいとしていて楽しそうだな』という思いで見ていました。映画のクランクインしたときは、やっぱりマンションの住民の俳優さんたちとは、少し距離がありましたね」と撮影を振り返る。
そんななか、心強い相棒となったのが皆川だ。ドラマも劇場版も、神谷の良きパートナーとして作品を彩る。「猿時さんはお芝居をしていて本当に面白い方です。独特の組み立てかたをされますし、演技に懐の深さというか、ご自身の人柄も染み込んでいる。ドラマのとき、コロナ前だったので一度しこたま飲む機会があったのですが、自分をさらけ出してくださるし、こちらにも突っ込んだ話を聞いてくるんです。そのおかげで仲も深まりましたし、ご本人としても役柄としても信頼を置ける方でした」
クールな神谷「自分もリアクションが薄いので似ているかも」
浅香が演じた神谷は、クールでバックグラウンドがあまり描かれていないミステリアスな役柄だ。「自分もリアクションが薄いタイプなので、ポーカーフェイスな神谷とは似ている部分もあります」と自身との共通点を挙げると「背景が描かれていないぶん、キャラクターをどう演じるかというよりは、視聴者の方にどう見せていくかにこだわりました。表情一つにも、どんな含みがあるのか、伏線が張られているのか……そういう部分を積み重ねていくことを意識していました」と役へのアプローチ方法を明かす。
ドラマをきっかけに街を歩いていても、多くの人から声を掛けてもらったという。「反響はすごくありました。劇場版が公開されることが発表されたあとも『犯人誰なの?』みたいなことから、『(ドラマで)死んだのに出るんだ?』なんて言われることもあります。そういった声を掛けていただけることは、幸せなことであり、とてもありがたいことです。大切にしていきたい作品です」としみじみ語る。
モチベーションが高まる現在
一方で「新しい作品で更新していかなければ……という気持ちもあります」と強い視線を向ける。
2008年に俳優活動を始めて10年以上の月日が流れた浅香。「俳優の仕事というのは、なにが正解かわからない。活動し始めた当初はなにも考えずに作品に臨んでいたのですが、いまは考え込んでしまうこともありますし、年齢的なこともありますが、作品に対して責任感や意義、使命感みたいなものを感じることは年々多くなっています」と現状について語る。
特に「いまモチベーションが結構高まっています」と照れ笑いを浮かべると「もちろんこれまでもお芝居に対して真面目に向き合ってきたつもりですが、そのときの置かれている立場によって、気持ちの波があったんです。昔は眠れないぐらい悩んでこともありましたし『もうやめてしまいたい』と思うこともありました。でもいまは仕事とプライベートのバランスがうまく取れるようになってきたのか、感情の波が平らになったような気がします。そのぶん、お芝居にしっかり集中できていると思います」と変化を述べる。
浅香は「ドラマとは違った結末が待っています」と期待をあおると「さまざまなキャラクターがどんな表情をして、どんな動きを見せるのか……。たくさん考察しながら、楽しんでいただければ」と見どころを語っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)