笠松将、恐怖と戦った「岸辺露伴は動かない」 しゃべれなくなるほどの緊張も
ドラマ「君と世界が終わる日に」シリーズなどで注目の若手・笠松将が、27日より放送されるNHKドラマ「岸辺露伴は動かない」第2弾(毎午後10:00~10:49放送)で人生初の食事制限、ボルダリングに挑み、過酷な役づくりをやり遂げた。原作ファンが多いゆえに恐怖と戦った本作の裏側、そして「価値観が大きく変わった」という激動の1年を振り返った。
【写真】笠松将「岸辺露伴は動かない」撮りおろしインタビューカット集
2013年から本格的に俳優活動を始め、金子修介監督の映画『生贄のジレンマ』でスクリーンデビュー。2020年に『花と雨』で長編映画初主演を務め、今年は日本テレビとHuluの共同制作によるドラマ「君と世界が終わる日に」シリーズや「全裸監督 シーズン2」(Netflix)、「エロい彼氏が私を魅わす」(FOD)、大河ドラマ「青天を衝け」、映画『君は永遠にそいつらより若い』など出演が相次いだ。27日より3夜にわたって放送される「岸辺露伴は動かない」では、笠松演じるキャラクターが発表、ビジュアルが公開されるなり大きな反響を呼んだ。
ドラマ「岸辺露伴は動かない」は、荒木飛呂彦の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズに登場する天才漫画家・岸辺露伴を主人公にしたミステリー。相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた漫画家の岸辺露伴(高橋一生)が、奇怪な事件や不可思議な現象に立ち向かう。ドラマ2弾で笠松が演じるのは4話「ザ・ラン」に登場する駆け出しのモデル・橋本陽馬。原作の中でも人気のあるキャラクターだけに、当初は不安もあったという。
「ファンが多い作品なので、演じるリスクもかなりあるとは思いました。肉体づくりに取りつかれるキャラなので、ビジュアルの説得力がまず必要というか。体が出来上がっていないと話にならない。僕が出来上がったと思ったとしても、上には上がいるわけで。僕はトレーニングが好きで、だからこそ限界があるのを知っているので、僕の肉体を観てください、なんて口が裂けても言えないですし、怖かったです」
それでも不安要素をなくすためにと自身を鼓舞し、誰に言われるわけでもなく行ったのが肉体改造だ。日頃から体を鍛えており、SNSなどでその肉体美も披露していた笠松だが、そもそもトレーニングは役づくりのためなのか、それとも趣味なのか。
「学生のころまでは部活でサッカーをやっていて、体が大きいというのはカッコいいことだったんですね。だけど18歳ごろから俳優を志して学生、高校生役などをやらせていただいたときに、共演者の方はシュッとしてカッコいいのに自分だけ大きいのが嫌だなと思うようになって。痩せたいと思っていた時期もあったんですけど、20代半ばぐらいからは僕自身のビジュアルはどうでもよくて、作品に説得力をもたせられればいいんじゃないかと思い始めました。そこから筋トレを始めてみようかなという感じになったんです。ただ、僕が筋トレしているのはボディメイクとは別のベクトルなんです。筋トレしていると気持ちが整理されるんですよね。なのでメニューの組み方も時間もまちまち。ごく短時間のこともあれば、逆に何セットやるんだというぐらいオーバーワークの時もあります」
そして臨んだ「岸辺露伴は動かない」の撮影においては、プロのトレーナーのもとで人生初の食事制限を行ったのだという。
「これまでは食べたいものを食べていましたが、今回はさすがにそれではダメだと。プロのトレーナーにご指導いただいたんですが、難しくて……。体重を落とせばいいというわけでもないんですよね。筋肉は落としてはいけないのでタンパク質はしっかり摂る必要がある。どういった方法で食事制限をするのかを考えるところから始まって、一日何回食事をするのか、実際にそれを撮影中にできるのかと。初めは摂取するカロリーを抑えていたら体重が落ちたので喜んでいたんですけど、鏡を見たら張りがなくなっていることに気づいて……。特に最後の2週間がキツくて、精神面でもイライラしてしまって、マネジャーとケンカするほどでした(笑)」
撮影現場の様子については「演出の渡辺(一貴)さん含め皆さんがプライドを持っていろんな意見を出し合ってから一つ一つのカットを丁寧に撮っていく。これだけ一つ一つに一生懸命向き合うんだと安心できました」とうれしそうな表情を浮かべる笠松。一方で、しゃべれなくなるほどプレッシャーを感じたシーンもあった。
「陽馬がボルダリングをするシーンがあるんですけど、僕ボルダリングをやったことがなくて。2時間ぐらい本番前に練習の時間をとってくださったんですけど一回もできなかったんです。天井をのぼったことなんてないので。スタッフの方が『大丈夫? 冷やす?』と心配してくださって、見たことがないぐらいの量の氷を買ってきて手足を冷やしてくださったり。演出部の人やボルダリングの先生も、もっと易しい方法を提案してくださったりしましたが、休憩中も『もし僕ができなかったらどうなっちゃうんだろう』と考えると、怖くてしゃべれませんでした。でも、奇跡的に本番ではできたんです。渡辺さんが『ありがとう』と一言言ってくださった時は泣きそうになりました。そこで安心して、満たされた感覚があって、もっと頑張ろうという気にもなって減量も加速していった感じはありますね」
先ごろ最終回を迎えた大河ドラマ「青天を衝け」では、主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の孫・敬三という大役を担ったが、俳優として大きく飛躍を遂げたこの1年をどう見つめているのか。
「自分の中での価値観は変わりました。これまではただがむしゃらに突き進んできましたが、今は応援してくださる方、僕が出ている作品を観てくださる方に楽しんでいただきたいという気持ちがより強くなり、責任感が芽生えたように思います。バラエティー、ドラマ、映画、SNS、いかなるかたちであっても、それは同じですね。活動初期から応援してくださる方がありがたく、そう思うとマネジャーや家族はどれだけ普段から支えてくれているんだろうと、また感謝も湧いてきました。そういう意味では意識が変わった一年ですね。いい一年でしたし、来年ももっといい一年にしていきたいと思っています」
笠松は、本日(27日)より、主演を務めるLINEオリジナルドラマ「つながりたくて、嘘をつく2」がLINE NEWS「VISION」で配信中(毎週月曜配信)。来年は日本テレビ系1月期水曜ドラマ「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて」(1月12日スタート、毎週水曜夜10時~)にレギュラー出演するほか、主演映画『リング・ワンダリング』(2月19日より全国順次公開)、ドラマ「君と世界が終わる日に Season3」(Huluで2月25日より配信)、ハリウッドデビューを果たしたマイケル・マン監督のドラマ「TOKYO VICE」(WOWOWで春放送・配信)などが待機中。ここ最近で海外の友人が増えたことをきっかけに、現在は英語も勉強中だという。(編集部・石井百合子)