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『劇場版 呪術廻戦 0』狗巻棘役・内山昂輝、おにぎりの具のセリフは「正解のない作業」

狗巻棘役の内山昂輝
狗巻棘役の内山昂輝

 世界的人気となっているアニメ「呪術廻戦」で、呪言師の狗巻棘を演じている声優の内山昂輝。少し憂いを帯びた声も魅力的であらゆる作品で存在感を発揮している彼が、「しゃけ」「おかか」など、おにぎりの具のみで日常会話をする特殊な役どころの狗巻役について「正解のない作業」と明かした。公開中の『劇場版 呪術廻戦 0』の見どころをはじめ、狗巻との出会いで得たものや声優としての武器についても語った。

【写真】緒方恵美・花澤香菜・内山昂輝ら『劇場版 呪術廻戦 0』初日舞台あいさつ

劇場版は乙骨と狗巻の関係性も見どころ

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『劇場版 呪術廻戦 0』

 原作は、人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描く芥見下々による大人気漫画。劇場版で描かれるのは、既刊単行本の中でも人気のストーリーの一つである「呪術廻戦」の前日譚「呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校」、通称“0巻”。テレビアニメシリーズの1年前を舞台とし、幼なじみの祈本里香(花澤香菜)を交通事故により目の前で失い、彼女に憑かれた乙骨憂太(緒方恵美)が、呪術高専の教師や生徒と出会い、愛する人の呪いを解くことを誓う姿を描く。

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 劇場版ではテレビアニメシリーズの過去にさかのぼることになるが、「ちょうど映画化が発表される前日に、別の作品で加茂憲紀役の日野聡さんと一緒にいたんですが、ジャンプに詳しい日野さんから今後の展開を教えてもらっていた」そうで、「その内容を聞いてみると、もし今後アニメで先の展開も描くとしたら、それよりも過去のことを知っておかないとキャラクターの背景がわかりづらくなるな……というもので。そう思っていた矢先に、劇場版として“0巻”が描かれるという発表があったので、なるほどな、これはいい流れが来ているなと感じました」とにっこり。「テレビアニメをご覧になった方も0巻を知ることで今後の展開にもより深く入り込むことができるはず」と語る。

 内山が演じるのは、乙骨の同級生となる狗巻棘。言葉に呪いがこもる“呪言”の能力があり、言葉を発すると周囲を傷つけてしまう可能性があるため、日常生活ではおにぎりの具だけで会話をしているキャラクターだ。内山は「乙骨は最初、狗巻とどのようにコミュニケーションを取ったらいいのかと戸惑う。両者がどのように歩み寄っていくのかも、映画の見どころの一つです。ぜひ劇場で確かめてほしい」と期待を寄せる。

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狗巻を通して実感した、芝居の奥深さ

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内山昂輝

 “おにぎりの具のみで会話をする”というキャラクターも、なかなか出会えるものではない。狗巻役を手にしたときには、どのような印象を抱いたのだろうか。

 内山は「いろいろなアニメのお仕事をしてきましたが、『こんなキャラクターまで誕生したのか!』という驚きがあった」と口火を切り、実際に役づくりをする上では「おにぎりの具だけでコミュニケーションを取るときに、感情豊かに表現していくのか、もしくはあまり色を付けずに静かに淡々と話すのか。その2パターンがあると思っていた」と述懐。「初めての収録のときに『一言発しただけで、彼の言いたいことが伝わるように感情豊かにやってほしい』という演出がありました。また原作サイドからは『この具では、狗巻はこういったことを言っている』という変換表のようなものをいただき、それを頭の中に入れて思い浮かべながら、いつも演じています」と力を込める。

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 少ない単語に感情を乗せる、というチャレンジについて「正解のない作業」と語る内山。「しゃけやおかか、高菜、ツナマヨなど何度も繰り返し、いろいろなバリエーションを試しています。スタジオで試行錯誤を繰り返し、監督や音響監督に判断してもらって、という流れです。みんなの共同作業でできあがったキャラクターです」と周囲に感謝しきり。

 「声の仕事をしていると、ちょっとした言葉の言い方の違いで、キャラクターの印象や気持ちの伝わり方も結構柔軟に変えられるものなんだな、とよく感じます。狗巻はその極北というか、微妙な変化で、いろいろなバリエーションが生まれるものなんだと実感させてくれるキャラクターです」と狗巻を通して芝居の奥深さをあらためてかみ締めたという。

内山昂輝の武器とは?

 劇場版のアフレコは、五条悟役の中村悠一と、パンダ役の関智一と一緒に臨むことができたそうで、「パンダのアクションシーンの収録は、迫力がすごかったですね」と声を弾ませ、「(制作の)MAPPAによる映像がものすごく細かく、速く動く。そういったアクションシーンでは、キャラクターの動きにのせる力みや息遣いなどは台本上、あんまり細かく指示されず、キャストに委ねられる部分も多いので難しいんですけど、関さんは少ないテイク数で完成させていました」と先輩たちからも刺激を受けながら、声優道を邁進している。

 1993年に劇団ひまわりへ入団し、子役からキャリアをスタートさせた内山。今、声優として武器に感じていることを聞いてみると、「教養がないことでしょうか」と意外な回答。「小さいころから事務所には入っていましたが、子役として売れていたわけでもないですし……、かといって声優として専門学校に通ったわけでもない。なので、アニメなら一般的にこう演じるとか、吹替えならこう演じるといった教養もない。でもだからこそ自由にできるのかも。声優のお仕事に関しては、すべて現場でいちいち学んできました。そういう素人っぽさが、僕の武器なのかもしれません」と思いを巡らせる。

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 そして、「いつも目の前のことに精一杯」と苦笑い。「『呪術廻戦』のようなぜいたくな映像を堪能できる作品に出演できて本当に光栄です。今後のキャリアについて考えることもありますが、運命は自分の意志で動かせるものもあれば、どうにもできないこともある。とにかく自分にできることを精一杯やって、やれることはやった、と思えるように進んでいくしかないのかなと感じています」と語っていた。(取材・文・撮影:成田おり枝)

『劇場版 呪術廻戦 0』は公開中

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