キルステン・ダンスト、10代で出演した『ヴァージン・スーサイズ』で得た自信
最近、ゴールデン・グローブ賞のドラマ部門で作品賞、監督賞、助演男優賞を受賞したジェーン・カンピオン監督の新作『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。1920年代のアメリカ・モンタナ州で牧場を経営する2人の兄弟の物語で、威圧的な兄役でベネディクト・カンバーバッチ、兄と対照的な優しい弟役でジェシー・プレモンスが出演。夫に先立たれた後、その弟と結婚する女性を好演したのが、実生活でもプレモンスの妻であるキルステン・ダンストだ。先日、アカデミー賞も有力視されている彼女のキャリアを振り返るバーチャルイベントが、非営利文化団体アメリカン・シネマテーク主催で開催。ダンストと共に、過去3本の作品でタッグを組んだ、映画監督のソフィア・コッポラが司会として出席した。
すごい透明感『ヴァージン・スーサイズ』のキルステン・ダンスト【画像】
カンピオン作品に参加することになった経緯についてダンストは、カンピオン監督が、若くしてソフィアの監督作(『ヴァージン・スーサイズ』)に出演した自分に、長らく興味を持ってくれていたからだと告白。当初、彼女の役はエリザベス・モスが演じる予定だったというが「エリザベスはテレビシリーズがあってやれなくなった。ジェシーの役もポール・ダノがやる予定だったけど、彼も『ザ・バットマン』と重なってやれなくなった。それからジェーンに、この役をやってほしいと言われた時は、叫び声を上げたわ(笑)」
「私は監督中心で作品を選ぶ。それから、自分がその役で何ができるのかを考えるの」というダンスト。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で再び脚光を浴び始めた彼女を見ると、役者にとって、作品選びがいかに大事なのかがよくわかる。そんな彼女を、ソフィアは、常に興味深い役に挑戦してきたと称賛していた。
ダンストにとって、10代で『ヴァージン・スーサイズ』に出演し、女優として大きく飛躍できたことは、キャリアに大きな影響を与えたようだ。「あの作品の後、みんなが私のことを違う目で見るようになった。とても若い時のあなたとの仕事が、たぶん、多くの若手女優たちが得られないような自信を与えてくれた。なぜならみんな、常に男性の視線を通して見られているから」。
『ヴァージン・スーサイズ』の後も、大ヒットとなった『チアーズ!』や、『スパイダーマン』シリーズ、カンヌ国際映画祭で女優賞に輝いた『メランコリア』など、次々と話題作に出演してきたダンスト。しかし、1989年の『ニューヨーク・ストーリー』で映画デビューして以来、すでに30年以上のキャリアを誇る彼女は、その間も多くの浮き沈みがあったと明かす。
「振り返ってみると、私の成長を見てきた(同年代の)人たちは、私より上の世代の観客が好まなかった作品を気に入ってくれていたんだと思う。公開当時はそこまで成功しなかった映画を、(ファンは)支持してくれていたんじゃないかな。だから今は、一緒に年齢を重ねてきたファンが待ってくれていた、別の世界を訪れたような感覚なの。それをファンと一緒に経験している感じ。ショービジネスの世界で歳を取るうえで、それって一番クールなことだと感じる」
大人の女優として、ますます脂が乗ってきた感のあるダンスト。今後彼女がどういった役に挑戦するのか楽しみだが、まずはアカデミー賞に期待したい。(細谷佳史/吉川優子:Yoshifumi Hosoya / Yuko Yoshikawa)