バットマン屈指の悪役・リドラーとは 原作コミック&実写作品の歴史
誰もが知る人気DCヒーローを、新たな解釈で描く映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(3月11日公開)。同作で主人公ブルース・ウェインの前に立ちはだかるのが、DCコミックスを代表するヴィラン・リドラーだ。80年以上続く「バットマン」コミックシリーズと、リドラーが登場した実写映像作品をもとに、名ヴィランの歴史を振り返る。
【画像】狂気!歴代『バットマン』映画&ドラマに登場したリドラー
コミックデビューは70年以上前
リドラーが初めてコミックに登場したのは、1948年発行の「Detective Comics #140」。実際に人気が出始めたのは、テレビシリーズ「バットマン」に登場してからで、以降はコミックで何度も描かれてきた。
他のキャラクター同様、設定は作品によって変わるが、なぞなぞに執着するところは共通である。リドラーという呼び名は「謎(riddle)」から付けられており、初期設定は、子供の頃に不正行為で謎解きコンテストに優勝したことが忘れられず、その後も執着し続けるというもの。1980年代のコミックには、子供時代に両親から過酷な虐待を受け、自分の思うことを直接的に言葉にすることができなくなり、なぞなぞを使って表現するようになったという設定もある。
本名にも変化があり、最初はエドワード・ニグマ(Edward Nigma、後に Edward Nygma)。ファーストネームを頭文字にするとE. Nigma、つまりenigma(謎)になる。また、1988年の「Batman #415」では、本名がエドワード・ナシュトン(Edward Nashton)で、仮名としてエドワード・ニグマを名乗る設定が登場した。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』版のリドラーは、エドワード・ナシュトンが採用されている。
映画・テレビドラマに登場した歴代リドラー
実写作品でまず登場したのは、テレビシリーズ「バットマン」(1966~1968)でフランク・ゴーシンが演じたリドラー。普段は緑色のスーツを着用し、ヴィランとして活動するときは、胸と背中に黒いクエスチョンマークのついた緑色の全身タイツとピンク色のアイマスクになる。なぞなぞを仕掛ける知能犯的な側面を持ちながら、全身タイツ姿で軽快に動き回るギャップがユニークだ。
そして、フランク版のユニークさを過激にパワーアップさせたのが、ジョエル・シューマカー監督、ヴァル・キルマー主演の映画『バットマン フォーエヴァー』(1995)でジム・キャリーが演じたエドワード・ニグマ/リドラーだ。ジムは子供時代、テレビ版リドラーのファンだったことから、本作でもテレビ版のスタイルを意識している。
全身緑色のタイツはテレビ版と同じで、さらにクエスチョンマークが無数についているアレンジ。おおげさで奇妙な動作と表情は、当時コメディー映画『エース・ベンチュラ』を大ヒットさせたジムの勢いを反映したもの。愉快なタイツ姿とのギャップは大きいが、その正体はウェイン産業に勤務する科学者。人々を洗脳するVR装置を発明する高度な知性の持ち主だが、発明が認められず、ブルース・ウェインに恨みを抱いてリドラーへと変貌する。
リドラーの屈折した精神面にフォーカスしたのが、テレビドラマ「GOTHAM/ゴッサム」(2014~2019)でコーリー・マイケル・スミスが演じたエドワード・ニグマ。全5シーズンある本作で、ニグマはシーズン1第1話から登場しており、完全にリドラーになるのはシーズン3第15話「リドラーの誕生」だ。人付き合いが苦手で気弱なゴッサム市警の科学捜査班の一員ニグマが、不運な事故によって自分の中に潜在していたもう一つの人格と遭遇し、二重人格のような状態を経て、少しずつ自信家で不敵な犯罪者リドラーに変貌していくさまが描かれていく。
捜査員時代は白衣で、リドラーになってもタイツ姿にはならず、鈍い光沢のある緑色の三つ揃えスーツという紳士的な服装。DCを代表するヴィラン・ペンギンとの「お互いを敵だと公言しつつ、実は屈折した愛情で結ばれている」という複雑な関係も同作のリドラーならではの魅力だ。
『ザ・バットマン』版はゾディアック・キラー意識
『スイス・アーミー・マン』『プリズナーズ』の演技派ポール・ダノが『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で演じるリドラーは、どのような人物なのか? 外見は予告編やキャラ別ポスターを見れば一目瞭然、これまでのリドラーとは全く異なる。本作では歴代リドラーのどんな部分を継承し、何を刷新しているのか。
メガホンを取ったマット・リーヴス監督は、今回のリドラー像について、1968年から1974年にかけて犯行を重ねた、実在の連続殺人鬼(ゾディアック・キラー)を意識したとも発言している。事件後、マスコミに「今まで37人殺した」という犯行声明文を送りつけたこのシリアルキラーが、リドラーにどんな影響を与えたのか。シネマトゥデイのインタビューでポールが語った「リドラーとバットマンは“コインの裏表”」という発言も気になるところだ。(平沢薫)