『ザ・バットマン』の世界観でジョーカーを描く可能性 マット・リーヴス監督インタビュー
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(3月11日全国公開)のメガホンを取ったマット・リーヴス監督がリモートインタビューに応じ、本作でバットマン誕生秘話を扱わない理由と、宿敵ジョーカーを描く可能性について語った。
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DCコミックスにおいて80年以上の歴史を誇るバットマンを、フィルム・ノワール調の探偵物語として描き出す本作。これまで何度も映像化されてきたバットマンだが、本作は主人公ブルース・ウェインが“暗黒の騎士”へと覚醒するオリジン・ストーリーではなく、バットマンを名乗って2年目の若きブルースが登場する物語。原作コミックにおける「バットマン:イヤーツー」だ。
なぜ、リーヴス監督は“2年目のバットマン”にこだわったのか? バットマンの原点に迫るコミック「バットマン:イヤーワン」もお気に入りであると前置きすると、「この映画において、再びバットマン誕生譚を扱うつもりはなかった。歴代の傑作『バットマン』映画で何度も描かれていますからね」と理由を説明する。
「私たちが構築したストーリーは、ブルースが“バットマン”とは何者であるかを模索していくというもの。バットマンになる過程より、バットマンを名乗って2年目の彼が、バットマンに成り切れてないという部分に焦点を当てたかった。ブルースは自己認識に欠けており、本当の敵が自分自身であることに気付けないで、自ら破滅を招こうとする。幼少期のトラウマを克服できず、視野が狭くなってしまっている。ブルースはもちろん、ゴッサムにとっても非常に危険な存在です。そんなバットマンに私は会いたくなりました」
若きブルースは、ゴッサム市警のゴードン警部補と共に、知能犯リドラーが仕掛ける連続殺人事件の解決に乗り出す。「彼が直面する壁は全て、バットマンとして成長するためのもの。つまりこのストーリーは『ブルースがどうしたらバットマンとして成長できるのか?』なんです」と語るリーヴス監督。「リドラーはゴッサム市長ら権力者を次々と狙い、なぜこの街が腐敗しているのかという手がかりを残していく。ストーリーが進むと、ゴッサムの歴史だけでなく、ブルースがバットマンになるきっかけでもあるウェイン家の歴史も絡んできます」とブルースの暗い過去にも焦点を当てることで、全く新しい『バットマン』映画誕生を目指したという。
シリーズにはリドラー以外にも凶悪なヴィランが存在する。最も代表的なキャラクターは、単独映画も製作されたジョーカーだ。新たな『バットマン』ユニバースを拡大していく中で、ジョーカーが登場する可能性は今後あるのだろうか。
リーヴス監督は「私は何事も秘密であることが大事であると思っている。観客にその一瞬しか味わえない体験をしてほしいからね」と切り出すと、「私が望むのは、『ザ・バットマン』に登場する全てのキャラクターが、今まで見たり読んだりしたことがない解釈で描かれることです」と回答。「『ザ・バットマン』の世界観でジョーカーを登場させるなら、間違いなく新たな解釈で描きます。そうでなければ、『なぜジョーカーを描く意味がある?』と言われてしまうから。歴史あるキャラクターを違った形で登場させることこそが、私たちが辿るべき道です」と期待を寄せた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)