オスカー初ノミネートのコディ・スミット=マクフィー25歳、子役出身で闘病を続ける苦労人
第94回アカデミー賞
第94回アカデミー賞で作品賞を含む最多12ノミネートされた映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で、ベネディクト・カンバーバッチふんする主人公に敵視される青年を演じ、アカデミー賞助演男優賞に初ノミネートされたコディ・スミット=マクフィー。すでにゴールデン・グローブ賞など数々の映画賞で受賞し、オスカーレースでも注目を集めている。
【画像】子役から現在まで、コディ・スミット=マクフィー出演作
そんなコディは、1996年6月13日、オーストラリア生まれ。現在25歳の若さだが、芸歴は長く、2006年に8歳で『ストゥランディド(原題) / Stranded』で映画デビューし、それ以来演技の道を歩んできた。実は、コディの父アンディ・マクフィーは元プロレスラーで『ウォルト・ディズニーの約束』などの俳優、姉シャノア・スミット=マクフィーも『オール・チアリーダーズ・ダイ』などの女優という俳優一家。そんな家族の影響で、彼が演技を始めたのはとても自然な成り行きだったといえる。
コディはすぐに才能を発揮し、2007年にエリック・バナの息子を演じた『ディア マイ ファーザー』でオーストラリア映画協会の若手俳優賞を受賞。2009年の『ザ・ロード』では、文明崩壊後の廃墟をヴィゴ・モーテンセン演じる父親と旅する息子を演じ、放送映画批評家協会賞の若手俳優賞にノミネート。その後も『モールス』(2010)でクロエ・グレース・モレッツ演じるヴァンパイアの少女に恋する少年役、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014)の知能の高い猿と親しくなる内向的な青年役と着実にキャリアを積み、『アルファ 帰還(かえ)りし者たち』(2018)では主演を務めて、氷河期の大地を狼と2人で旅する青年を熱演した。
その一方でアメコミ映画にも進出し、『X-MEN:アポカリプス』(2016)、『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019)で、青い肌のミュータント、ナイトクローラーを演じた。しかし、順調なキャリアの途中には困難もあった。16歳の時、関節が炎症を起こして痛みや腫れが起きる病気である強直性脊椎炎を患ってしまったのだ。この病気は完治せず、今も闘病を続けながら活動しているという。
こうした道のりを経て達した、今回のアカデミー賞初ノミネート。本作で彼が演じたピーターは、細かな手仕事を好む繊細な青年で、ベネディクトが演じる伝統的なカウボーイの価値観を尊ぶ農場主に、敵意を剥き出しにされてしまう。コディはそんなピーターが、自分と接点があると感じたと「GQ」誌のインタビューで語っている。「僕自身、いわゆる男らしい外見じゃない。でも、僕の父は体格がよくて、体はタトゥーで覆われていて、いつもバイクに乗ってた。だから、僕も筋肉をつけてタトゥーをしなくちゃいけないのかと考えて悩んだ時期がある。その頃のことをよく覚えているし、そんな必要はないんだと理解するのには、かなり時間がかかった」。
そう語るコディだが、私生活は彼が演じたピーターとはあまり似ていない。10代の頃から交際している一般人の恋人レベッカがいて、コロナ感染拡大によるロックアウト時期には、彼女と家族と一緒に故郷オーストラリアで過ごしていた。
アカデミー賞授賞式の結果も気になるが、すでに彼には2021年の6月に全米公開、7月日本公開の話題の新作がある。それは『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督が、伝説的ミュージシャンとそのマネージャーを描く映画『エルヴィス』。トム・ハンクスがエルヴィス・プレスリーのマネージャー役、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のオースティン・バトラーがプレスリー役を演じる作品。コディが演じるのは、プレスリーが影響を受けたと言われる伝説的カントリー歌手のジミー・ロジャース役。コディはこの役で歌声を披露するのか、どんな新たな境地を見せてくれるのかも気になるところ。
そして、コディにはもう一度演じたいと公言している役がある。それは彼が『X-MEN』シリーズで2度演じたナイトクローラー。この青い肌のミュータントは、特殊メイクでほとんど素顔がわからない役だが、彼のお気に入り。彼が『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で共演したカンバーバッチは、マーベル映画のドクター・ストレンジ役でもお馴染みで、その新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』には『X-MEN』のメンバーが登場するという噂もある。コディはこの続編には参加していないそうだが、コディ演じるナイトクローラーが、今後のマーベル映画に登場する日が来るかもしれない。(平沢薫)
第94回アカデミー賞授賞式は、3月28日(月)午前7時30分よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて生中継