『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介、最優秀監督賞を受賞!被災者との対話が監督としての基盤に
第45回日本アカデミー賞
第45回日本アカデミー賞の授賞式が11日、港区のグランドプリンスホテル新高輪で行われ、映画『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介が最優秀監督賞に輝いた。
村上春樹の短編小説をもとにした『ドライブ・マイ・カー』は、妻を失った主人公(西島秀俊)が目を背けてきた妻との関係に向き合い、再生へと向かう姿を描いた作品。国内外で多数の映画賞を受賞しており、今年の米アカデミー賞では日本映画としては初めてとなる作品賞をはじめ、4部門でノミネートを果たしている。
日本アカデミー賞での快挙に「今日は3月11日で、11年前の今日、地震があり、津波があり、原発事故がありました」と切り出した濱口監督。「私はその後、震災が起きた後から2年ほど、酒井耕と共同監督でドキュメンタリー(『東北記録映画三部作』)を作っていました。それは主に津波の被害に遭われた方たちのインタビューをするもので、もちろんいろいろなかたちで被害に遭われた方たちだったのですが、示してくれた力強い生きる姿というものがあって、こういう生命力を自分は捉えていきたいというふうにそのとき思いました。そのことが今、自分の監督をする基盤になっていると思います」
続けて「(今回の受賞が)その方たちと十分に関係があることか自信はないのですけれども、みなさんがいてくれて私はこういうふうにやっていますと、その当時お話を聞いた方には申し上げたいし、御礼も述べたいと思います。その結果として『ドライブ・マイ・カー』という映画ができて、編集の山崎(梓)さんが誇りに思います、と言ってくださいましたけれども、私もそう思っています。一個一個、自分たちの仕事、一日一日の仕事というものが未来を作っていくということなのだと思います」と切々と思いを述べる。
「間違えることもあると思いますが、その度に引き返して、本当に少しずつ、今いるところから進んでいくしかない、ということを本当に思います。ほんの少しでも、いい社会にするとか、いい世界にするというと大げさですが、今この場所からしか始まらないのだと思っています。みなさんは一緒に映画を作る今の仲間であり、おそらく未来の仲間なのだと感じています。一緒に映画を作っていけたらうれしいなと思います。今日はありがとうございました」と締めくくった。
濱口監督は商業映画デビュー作となった『寝ても覚めても』(2018)でカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、同映画祭で2度目のコンペ選出となった『ドライブ・マイ・カー』で日本人初となる脚本賞を受賞。三つの物語が展開する『偶然と想像』(2021)ではベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したほか、ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)に輝いた黒沢清監督の『スパイの妻<劇場版>』(2020)では脚本家として参加しており、世界的な活躍を見せている。
なお、同部門では『孤狼の血 LEVEL2』の白石和彌、『護られなかった者たちへ』の瀬々敬久、『いのちの停車場』の成島出、『すばらしき世界』の西川美和が優秀監督賞に輝いている。(編集部・大内啓輔)