助演男優賞はトロイ・コッツァー!ろう者男優のオスカー受賞は史上初
第94回アカデミー賞
第94回アカデミー賞の授賞式が28日(現地時間27日)米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われ、『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが助演男優賞を受賞した。コッツァーにとってオスカー初ノミネート、初受賞。聴覚障害のある俳優がオスカーで受賞するのは『愛は静けさの中に』(1986)で主演女優賞を受賞したマーリー・マトリン以来35年ぶり、男優では初となる。本作ではコッツァーとマトリンが夫婦役で共演している。
『コーダ あいのうた』は、2014年に制作されたフランス映画『エール!』をリメイク。マサチューセッツ州の海辺の町を舞台に、4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる長女(エミリア・ジョーンズ)が、歌の才能を認められたことをきっかけに夢と現実の狭間で葛藤するさまを追う。タイトルの「コーダ」とは、「Child of Deaf Adults」の略で、ろう者の親を持つ子どもを指す。耳の不自由な両親と兄を、実際に聴覚障害のある俳優たちが演じている。
壇上でプレゼンターにオスカー像を預けたトロイは「ここに立つことができるなんて、本当にすごい。信じられません。この作品を認めてくださったアカデミーの皆さまに感謝します。私たちの映画『コーダ』が世界中で公開され、ホワイトハウスにまで届いたことは本当にすばらしいことです」と手話でスピーチ。
さらに、シアン・ヘダー監督をはじめとした製作陣への感謝を伝えると、「私の父は、家族で一番手話が得意な人でした。彼は交通事故に巻き込まれ、身体がまひになり、手話ができなくなりました。父から多くのことを学びました。彼は僕にとってヒーローです。ありがとうございます」と家族に感謝。最後に「この瞬間を、ろう者コミュニティ、CODAコミュニティ、障がい者コミュニティに捧げます。これは私たちの瞬間です。父、母、そして弟は今日ここにいませんが、今の私を見てください。僕はやり遂げた。愛してるよ」と締め括り、盛大な拍手を受けた。
コッツァーが演じたのは、漁業を営む父フランク。漁獲制限を課した政府への怒り、娘を深く愛しながらも生活のために子離れできない葛藤を感情豊かに体現した。アカデミー賞前哨戦とされる賞レースでは、英国アカデミー賞、インディペンデント・スピリット賞、放送映画批評家協会賞などで助演男優賞を受賞している。なお、ろう者の俳優がオスカーにノミネートされたのは、マーリー・マトリン以来2度目。
助演男優賞候補にはコッツァーのほか、コディ・スミット=マクフィー(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、ジェシー・プレモンス(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、キアラン・ハインズ(『ベルファスト』)、J・K・シモンズ(『愛すべき夫妻の秘密』)が挙がっていた。(編集部・石井百合子)