大阪アジアン映画祭でチケット完売の話題作『アニタ』配信決定
第17回大阪アジアン映画祭(3月10日~20日開催)で観客賞とスペシャル・メンションを授与された香港映画『アニタ』(リョン・ロクマン監督)のディレクターズ・カット版が4月6日よりディズニープラスで配信される。1980年~90年代に香港をはじめアジアで絶大な人気を誇った歌姫アニタ・ムイの生涯を描いた本作は、同映画祭で日本初上映が決まるや大きな話題を呼び、2回の上映ともチケット完売となっただけに、ファンにとっては朗報と言えそうだ。
同作は歌手だけでなく、映画『ルージュ』(1987)で中華圏のアカデミー賞こと台湾・金馬奨で最優秀主演女優賞を受賞するなど俳優としても活躍し、2003年12月30日に子宮頸がんで40歳という若さでこの世を去ったアニタの激動の人生を描いたもの。その中には歌手・俳優の近藤真彦をモデルにしたと思われる日本人歌手とのはかなき恋や、くしくも同じ年に亡くなった俳優レスリー・チャンとの友情、さらには山口百恵をはじめとする当時香港で流行していた日本の歌謡曲がふんだんに盛り込まれ、日本人にとっても青春プレイバック的な内容となっている。
大阪アジアン映画祭ではコンペティション部門で上映された。審査員を務めた映画会社ムヴィオラの武井みゆき代表によると、他のコンペティション部門の作品と比較して本作のみ製作予算規模が大きいことからメインの賞から外したが、それでも「今年の大阪アジアン映画祭に本作が存在したという足跡を残したい」(武井代表)とスペシャル・メンション(特別表彰)を授与するに至ったという。
さらに「香港エンターテインメントの輝ける星であったアニタの人生を愛を持って描くと同時に、香港というかけがえのない街の1980年代から今に至る歴史をも感じさせる感動的な作品でした」と語り、ロクマン監督が約1年かけて関係者に取材したという丁寧かつ真摯(しんし)な作品作りを高く評価した。
なお本作は香港のアカデミー賞こと香港電影金像奨に作品賞、主演女優賞など12部門にノミネートされている。今年は新型コロナウイルス禍の影響で授賞式が先延ばしとなり、7月17日(現地時間)に行われる予定で、こちらも注目したい。(取材・文:中山治美)