南沙良、山田孝之監督の自由さに驚き「海みたいな感じ」
映画監督、俳優、ミュージシャンら多彩な監督たちが個性豊かな短編映画を制作するプロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』で、山田孝之、阿部進之介、伊藤主税(映画プロデューサー)らがプロデュースする本プロジェクトのSeason3が公開となる。9本の短編の中の1本、ちょっと不思議なテイストの『沙良ちゃんの休日』で主演を務める南沙良。『女子高生に殺されたい』での静かでいながらたぎるような熱い演技が記憶に新しく、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演予定、着実にキャリアを重ねる彼女は、プロデューサー・脚本・監督を務めた山田から、何を受け取ったのだろうか。
「最初、『沙良ちゃんの休日』というタイトルに『え?』と驚きました」と笑う南。自身の名前が冠されているためフィクションとノンフィクションの境目がよくわからず、本人としての存在が要求されているのかもしれないと戸惑ったようだが、山田監督は「フィクションもノンフィクションも関係ない、あったのかもしれないし、これから起きるのかもしれない “かもしれない出来事”だ」と語ったという。「とても自由ですよね。山田さんご自身がすごく自由な方で、それが作品の内容や発想、考え方、いろいろなところに出ていると思いました」と感じ入った様子だ。
「1回だけだと物足りない。何回も観たいと思いました」と映画の感想を語った南。家族、SF、ヒューマン、ラブ……9本の短編はシチュエーションも撮り方もバラエティーに富んでおり、抽象的な表現も多いため、1回観ただけでは理解が追い付かない部分もあるためだろう。そんな作品の1作目に登場する本作は、南演じる女と、紀里谷和明が演じる男が道を歩いているところが主なシーンとなり、一言で説明し難いシュールな物語。掴みどころのない作品だが、南は「山田さんはていねいに説明してくださり、お芝居しやすい環境を作ってくださいました」とほほ笑んだ。「そのときの心情だったり状況だったりを、くわしく言ってくださるんです。だからわたしも理解しやすいですし、『ああ、確かにそうですね』と、ストンと自分の中に入ってくる感じがありました」と、スムーズに役を飲み込めたことを山田に感謝した。
今回は、南沙良としてその場に存在してほしいというオーダーだった。オフの日にただカレーを食べに来ただけで、道を歩いていたらたまたま男と一緒になり、やり過ごそうと道端の花を見て立ち止まるとそれが造花で、どうして造花がここにあるのかと考える……と、具体的に状況や理由が提示されたという。完成品には不思議テイストがあふれているが、「撮影現場にいるときはぜんぜんシュールとかではなくて、いたって普通でした」と撮影の状況を明かした。
山田監督と南は、2021年に公開され、山田が竹中直人と斎藤工とともに監督を務めた『ゾッキ』で出会った。そのときも出演シーンは多くなく、撮影はほぼ1日のみ。本作でも約2日間だけの撮影で、それほど長く交流があったわけではないが、「山田さんにお会いすると背筋が伸びる感じがします。なんというか……山田さんのお人柄だと思うんですが、安心するんです。なにがどうと言葉で説明できるものではないんですが、とてもナチュラルです」と山田監督への信頼を語った。
さらに、「山田さんは穏やかで、すごくお優しい方です。私はその空気感がとても好きです。たとえば、ですけど、なんだか海みたいな感じです。広く大きくというか……ちょっとニュアンスを伝えるのが難しいです」とていねいに言葉を紡いだ。最後に「山田さんとはぜひまたご一緒させていただきたいです。監督としてでも、共演者としてでも何でもいいです」とアピールした。(取材・文:早川あゆみ)
映画『MIRRORLIAR FILMS Season3』は5月6日より公開