役所広司、“妻”松たか子の包容力に感謝 時代劇で初の夫婦役共演
役所広司が2日、丸の内ピカデリーで行われた映画『峠 最後のサムライ』(6月17日公開)の完成披露試写会に出席し、共演者の松たか子と夫婦役を務めた本作での撮影を振り返った。この日は役所と松とともに小泉堯史監督も姿を見せた。
本作は、役所が主演した映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』などを手掛けた小泉監督が司馬遼太郎の「峠」を映画化した時代劇。越後長岡藩の筆頭家老である河井継之助が激動の時代を生きた姿を描く。継之助を役所が演じ、その妻として継之助を見守り続ける妻のおすに松がふんした。
新型コロナウイルスの影響を受けて3度の公開延期を経て、6月17日に公開を迎える本作。念願の完成披露に「いろいろな事情が重なって公開が遅くなってしまいましたが、この映画の持つメッセージにおいては考えさせられる時期の公開になったような気がします」としみじみ。妻役の松は「みなさんに見ていただけることをとても嬉しく思っています」と笑顔を見せた。
役所とは『蜩ノ記』以来のタッグとなる小泉監督は「私は司馬遼太郎のファンで、河井継之助という人物に惹かれました。2017年5月くらいにシナリオを役所さんに送ったら『この役に挑戦してみたい』と言われて。役所さんには大きな力になっていただいた」と製作までの道のりを語る。河井継之助とは、幕末に日本中が二分されるなかで、和平のために武装中立を目指した人物。役所は「河井継之助さんの未来を見据えた毅然とした態度から出る決断力は、リーダーとして理想的だと思った。シナリオを読んだらセリフが膨大で……。このセリフに立ち向かっていくのが今回の役割だと思った」と会場を沸かせた。
今回、役所と松は初の夫婦役共演。役所は「松さんが二十歳くらいの時に同じドラマに出演したことがあります。松さん演じるお姫様が籠の中から出てくるシーンがあって、その時に『なんて華のある女優さんだろうか』と思うくらい上品で。久々にお会いしたら女性としてもお母さんとしても妻としても豊かになっていく感じがして。松さんの包容力で夫婦のシーンが出来上がった気がします」と感謝。
その言葉に松は「本当にもったいない言葉! 役所さんの方を見ることができません」と照れながら感謝を述べる。続けて「役所さんと現場でお会いしたら、軽快な継之助さんで。おすがはこの人と一緒に生きている人なんだとイメージも広がりました。妻役をやらせてもらえるということで、私でいいのだろうか? と思っていた私を役所さんが包んでくれました」と語り、河井継之助については「こんなにカッコいい人いる? あ、いた! みたいな。そう思わせてくれるくらいカッコいい人でした」と絶賛した。
この日は、映画の内容にちなんで「ゆずれないもの」を聞かれた役所。「河井継之助と僕のゆずれないものではスケールが違い過ぎて……」と苦笑するも「やはりこの国を焼け野原にするような戦争は何があっても避けなければならないと思う。河井継之助の力をお借りして言いました」と平和を祈念した。
最後に、主演の役所は「お待たせいたしました、やっと公開となります。サムライという人間像は、日本人が生み出した芸術品であると司馬遼太郎先生は仰っていました。21世紀に生きる我々に響く言葉がたくさん詰まった映画になりました」と力強く語った。(編集部・大内啓輔)