『トップガン マーヴェリック』で最注目!ヴァル・キルマーの現在
トム・クルーズ主演の大ヒット作『トップガン』の続編『トップガン マーヴェリック』が5月27日より公開されるが、中でも話題になっているのが、主人公マーヴェリックとライバル関係にある、ヴァル・キルマー演じるアイスマンの再登場。というのも、ヴァルは2015年から喉頭がんで闘病しており、出演が危ぶまれていたのだ。ヴァルは『トップガン』の後、どんな道を歩んできたのだろうか。
現在62歳のヴァルは、1959年12月31日、ロサンゼルス生まれ。1962年生まれのトムより3歳年上だ。17歳でジュリアード音楽院演劇科に入学し、舞台からキャリアをスタート。1983年にテレビドラマに初出演、1984年の『トップ・シークレット』で映画デビュー。1986年に『トップガン』に出演した。
実は当時、ヴァルは『トップガン』出演に乗り気ではなかった。その理由は、本人によれば、それまでは舞台でも映画でも主演だったから。しかし、トムはアイスマン役には彼しかいないと考えて、彼を追い回し、彼が出演を承諾した瞬間には、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーたちとハイタッチをしたと語っている。
では、アイスマンとはどんなキャラクターなのか。それは主人公とは対極にある存在。トムが演じた主人公マーヴェリックは、パイロットの腕は天才的だが、熱血漢で規則からはみ出す行動が多い問題児。ヴァルが演じたアイスマンは、そのニックネーム通り、冷静沈着で、論理的な思考を重視する人物。2人は性格が真逆なため最初は対立するが、やがて互いを認め合う間柄になる。映画は大ヒットし、トムだけでなくヴァルにとっても代表作の一つになった。
その後のヴァルの活躍はめざましい。ロン・ハワード監督のファンタジー・アドベンチャー映画『ウィロー』(1988)、伝説的ロックバンドのボーカリストであるジム・モリソンを演じた『ドアーズ』(1991)、マイケル・マン監督の『ヒート』(1995)、マイケル・キートンに続く二代目バットマンを演じた『バットマン フォーエヴァー』(1995)と話題作が続く。
当時のヴァルの勢いを証明するのが、当時のガールフレンドたちの華やかさ。1980年代前半には、人気歌手のシェールやカーリー・サイモン、女優ではミシェル・ファイファー、エレン・バーキンと噂に。『ウィロー』で共演したジョアンヌ・ウォーリーと1988年に結婚、1996年に離婚するまでは噂がないが、その後すぐにスーパーモデルのシンディ・クロフォードと交際。ダリル・ハンナ、アンジェリーナ・ジョリーとも噂になった。ちなみにジョアンヌとの間の2人の子供、娘メルセデス・キルマーと息子ジャック・キルマーは、俳優として活動中だ。
そんなヴァルだが、2000年代以降は、出演作は少なくないがあまりヒット作に恵まれず、目立つのはオリヴァー・ストーン監督の『アレキサンダー』(2004)、ロバート・ダウニー・Jr主演の『キスキス,バンバン』(2005)、デンゼル・ワシントン主演の『デジャヴ』(2006)あたり。2010年代はフランシス・フォード・コッポラ監督の『Virginia/ヴァージニア』(2011)、テレンス・マリック監督の『ソング・トゥ・ソング』(2017)に出演。映画と並行して舞台に出演し、2012年からは「トム・ソーヤーの冒険」の作家マーク・トウェインを描く一人舞台「シチズン・トウェイン(原題) / Citizen Twain」の脚本・演出・主演を務め、各地で上演した。
そして、2015年1月に流れたのが、ヴァルががんを患っているとの噂。この時は彼自身が噂を否定したが、2017年4月には彼自身がこの噂を認め、喉頭がんを発表。同年12月には、彼がステージ4の喉頭がんの治療のため、化学療法と気管切開手術をし、話すときには専用の装置が必要なことが報じられた。2020年になってこの数年間はがんから解放されているというが、一時は闘病生活を送っていた。
ちょうどその頃、2017年5月に発表されたのが、『トップガン マーヴェリック』の製作決定。するとヴァルはすぐさま反応する。自身のインスタグラムに、アイスマンが描かれたTシャツを着た自分の画像をアップし「友人たちが『トップガン2』が今日正式発表されたと教えてくれた。オレの準備はできてるぜ、トム」というコメントをアップしたのだ。そして、トムもそれを見逃さなかった。彼はこの映画の公式プロダクションノートでも、このヴァルのインスタでの発言に触れ、彼自身も企画当初からヴァルの出演を熱望していたと語っている。
こうして実現したのが、ヴァル演じる『トップガン マーヴェリック』のアイスマン再登場だ。トム演じる主人公が、若手パイロットを指導する教官となった本作で、ヴァル演じるかつての好敵手アイスマンは、どんな役割を果たすのか。ヴァルの姿はファイナル予告編にチラッと登場しているが、詳細は未発表。とはいえきっと2人の登場シーンには、マーヴェリックとアイスマンの友情だけでなく、トムとヴァルの友情も反映されているに違いない。
最近のヴァルの活動は活発だ。彼の人生を描くA24製作のドキュメンタリー『ヴァル(原題)/ Val』が昨年夏から全米のAmazon Prime VIdeoで配信中。本年4月には彼の回想録「アイム・ユア・ハックルベリー(原題) / I'm Your Huckleberry」も刊行された。本作以降も映画出演が続き、『ファースト・ライン』のコート・ヴォアヘース監督の歴史映画『キャニオン・デル・ムエルト(原題) / Canyon Del Muerto』でアビゲイル・ブレスリンと共演、『ウォーキング・ゾンビランド』の脚本を手掛けたショーン・ハート監督の映画『リップタイド(原題) / Riptide』でヘンリー・トーマスと共演。そして、先述のマーク・トウェインを描く一人舞台のドキュメンタリー映画『マーク・トゥエイン・アンド・メリー・ベーカー・エディ(原題) / Mark Twain and Mary Baker Eddy』を彼自身が監督する企画も進行中。闘病から復活したヴァルは、自身の道を力強く歩み続けている。(平沢薫)