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ユアン・マクレガー版オビ=ワンの魅力 「SW」シリーズ史上最も哀しみを背負った人物

「オビ=ワン・ケノービ」毎週水曜日16時よりディズニープラスにて独占配信中
「オビ=ワン・ケノービ」毎週水曜日16時よりディズニープラスにて独占配信中 - (C)2022 Lucasfilm Ltd.

 アナキン・ウォーカーをジェダイ・ナイトに育て上げ、その息子ルークをジェダイの道へと導いたジェダイ・マスター、オビ=ワン・ケノービ。『スター・ウォーズ』シリーズを通し、最も重要なキャラクターの一人を主人公にしたドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」がディズニープラスで独占配信中だ。本作は『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)の10年後、ルークを見守りながら辺境の惑星タトウィーンで隠れるように暮らしてきたオビ=ワンが、再び戦いに巻き込まれていく物語。これまでにないオビ=ワンの一面が描かれている(映画『スター・ウォーズ』シリーズの詳細、ドラマ「オビ=ワン・ケノービ」3話までの展開に一部触れています)。(神武団四郎)

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 オビ=ワンが初めて登場したのは『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)。砂漠で世捨て人ベン・ケノービとして暮らすオビ=ワンが、若きルーク・スカイウォーカーにフォースとは何かを伝受する。この作品では、サーの称号を授かった英国映画・演劇界の重鎮アレック・ギネスが晩年のオビ=ワンを好演。ひょうひょうとした中に慈しみ漂う名演で、作品に深みや重みを与えていた。

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 一方『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)から始まったプリクエル・トリロジーでは、『トレインスポッティング』(1996/ダニー・ボイル監督)でブレイクしたスコットランド出身のユアン・マクレガーが、若き日のオビ=ワンを熱演。ジェダイ・ナイトの見習いからマスターへと成長(1でパダワンからナイトになり、3でマスターに昇格)する姿を演じて絶賛された。「オビ=ワン・ケノービ」では、そんなマクレガーが主演はもちろん製作総指揮にも名を連ねている。

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』より幼少期のアナキン(ジェイク・ロイド)とオビ=ワン(C)2022 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで配信中

 『ファントム・メナス』では、パダワン(見習い)時代のオビ=ワンが、師クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)と共にシスの暗黒卿に立ち向かう。髪を短く刈り込んで師のやや後ろを歩くその姿は、いかにも若き実習生。任務について不安に駆られクワイ=ガンに諭されたり、直感を大切にする師に規則を守るべきだと意見するなど真面目で模範的な青年だ。28歳(初公開時)だったマクレガーも、若き日のオビ=ワンを瑞々しく演じている。

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 そんなオビ=ワンが真価を発揮したのが、実力で自分を上回るダース・モール(レイ・パーク)との戦いである。教えに従い感情を抑えた慎重派のオビ=ワンが、ここでは目の前で師を倒され激高。力で押しまくるラフなファイトに加え、ライトセーバーを失った絶体絶命の状態では一瞬の隙を突きクワイ=ガンのライトセーバーを引き寄せダース・モールを斬り捨てた。死の間際にアナキン(ジェイク・ロイド)を託されたオビ=ワンは、半ば強引にアナキンをパダワンにするなど型にはまった優等生も卒業し、師のスタイルを継承する。アナキン初登場だけでなく、オビ=ワンの成長もこの作品の見どころだった。

 『ファントム・メナス』の10年後を描いた『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2003)は、ジェダイ・ナイトとして、また師として活躍するオビ=ワンが描かれた。若さを前面に出した前作から一転、後にトレードマークになる髭をたくわえ登場した今作は、ウィットに富んだ口調を含めギネス版に近い雰囲気だ。そもそも『ファントム・メナス』では、演技力に加えギネスとの映像比較を経て選ばれたマクレガー。決定後はギネスの発声や方言まで近づけるためのトレーニングも受けていた。(書籍「メイキング・オブ・エピソード1/ファントム・メナス」より引用)似ていると感じるのも当然なのだ。

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 10年に及ぶ修行によって優れたフォースの使い手になったアナキン(ヘイデン・クリステンセン)だが、内面は少年時代のやんちゃなまま。そんな奔放なパダワンとジェダイ評議会の板挟みになったオビ=ワンは、まるで中間管理職のようだ。オビ=ワンがそんな立場に甘んじたのは、クワイ=ガンとの約束だけでなく、修行を通しアナキンと結ばれた、師弟を超えた強い絆があればこそ。無茶な命令違反を繰り返すパダワンを、半ばあきれながら諭す姿も『クローンの攻撃』の見どころといえる。マクレガーも青さ漂う前作から一転、優しい兄貴としてのオビ=ワンを演じていた。

 アミダラ(ナタリー・ポートマン)との恋、共和国最高議長パルパティーン(イアン・マクディアミッド)の急接近と、アナキンを巡る波乱のドラマが繰り広げられる今作は、その分オビ=ワンの単独ミッションが多いのも特徴だ。嵐の惑星カミーノへの潜入シーンでは、ジェダイ評議会もその存在を知らなかったクローン軍団を発見。激しく雨が降りしきる中、ジェットパックで宙を飛ぶジャンゴ・フェット(テムエラ・モリソン)にライトセーバーで立ち向かう迫真のバトルも見せつけた。クライマックスではアナキンと師弟でドゥークー伯爵(クリストファー・リー)に挑む、ダース・モール戦を彷彿とさせる戦いを展開。ドゥークーに敗れ、目の前でアナキンが右手を切り落とされる苦い挫折も味わった。

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 プリクエル・トリロジーの完結編『シスの復讐』は、オビ=ワンとアナキンの決別の物語。前作から3年後、クローン戦争を通じてアナキンはさらに成長し、オビ=ワンも彼を一人のジェダイとして信頼。パルパティーンとの関係を疑問視するジェダイ評議会に対しても、オビ=ワンはアナキンの側に立っていた。

『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』よりアナキン(ヘイデン・クリステンセン)とオビ=ワン(C)2022 Lucasfilm Ltd. ディズニープラスで配信中

 そんな師弟の絆を垣間見ることができたのが、敵将グリーヴァス討伐のため出陣するオビ=ワンにアナキンが声をかけるシーン。これまでの身勝手な言動を詫びるアナキンを、オビ=ワンが優しくねぎらう姿は、かつてクワイ=ガンに非礼を謝罪したオビ=ワンが逆に師から褒められる『ファントム・メナス』のやりとりを思い出す。そんな2人の師弟愛がクライマックスの悲壮感を盛り立てた。吹き出す溶岩を背景に、オビ=ワンと暗黒卿に落ちたアナキンが繰り広げる死闘は壮絶のひと言。憎悪を露わにしながら炎に焼かれるアナキンに、オビ=ワンが「弟と思っていたのに!」と無念を告げる魂の叫びも圧巻だった。

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「オビ=ワン・ケノービ」より枯れた味わいのオビ=ワン(C)2022 Lucasfilm Ltd.

 この出来事によってオビ=ワンは無力感に苛まれ、心に深い傷を抱えてしまう。それがドラマ「オビ=ワン・ケノービ」のベースにある。自らの手でアナキンを倒した後、その息子ルークをアナキンの義兄弟ラーズ夫妻に預けたオビ=ワン。彼はルークを見守りながら、「ベン」と名乗り名もなき労働者として静かな日々を送っていた。その裏で密かにジェダイ復興の使命に燃えていると思いきや、そうではない。10年もの間、贖罪の念を背負い続けたことで、オビ=ワンはジェダイであることを捨て「ルークを遠くから眺めるだけの男」になっていた。

 思い返せばオビ=ワンは、1000年ぶりのシスの出現(エピソード1より)とジェダイの終焉を最前線で体験。激動の時代を生き抜いただけでなく、師クワイ=ガンの最期に立ち会い、その遺言に従い育てた愛弟子アナキンはシスの側へと寝返ってしまう。その妻アミダラの死にも直面し、遺児ルークやレイアを守るという忍耐深い使命を任される……。『スター・ウォーズ』シリーズ中、最も苦難を背負った人物といえる。「オビ=ワン・ケノービ」は、ライトセーバーを砂漠に埋めフォースを封印した男の再生の物語なのだ。

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「オビ=ワン・ケノービ」よりオビ=ワンと幼少期のレイア姫(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)(C)2022 Lucasfilm Ltd.

 第1話から3話までを観ると、思いのほかオビ=ワンとダース・ベイダーの対決色が濃い。幼いレイア(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)との出会いやラーズ(ジョエル・エドガートン)との確執、幼少時代から消えまくりの冴えまくりのレイアの毒舌などユーモラスな描写も含め、エピソード4以降につながる布石も少なくない。そんな中、頼もしいのがマクレガーが演じるオビ=ワンのなりきりぶりだ。今作の設定は『新たなる希望』の9年前。初公開時にギネスは63歳、一方マクレガーは現在51歳と計算上はほぼ同年齢だ。メイクも手伝い、レイアに「ヨボヨボ」呼ばわりされるほどいい感じの枯れ具合で演じている。第3話では、長年戦いから退いていたブランクを感じさせるショッキングな対決シーンも見られるが、そんな彼が帝国の追っ手にどう挑むのか。ベイダーが絡んでくるだけに、熱き復活劇を期待したい。これまで映像作品では描かれていなかったオビ=ワンの過去にも触れており、今後の展開が楽しみだ。

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