75歳以上は生死を選択…賛否を呼ぶ衝撃作『PLAN 75』満席続出の好スタート
倍賞千恵子が主演を務める映画『PLAN 75』が6月17日に劇場公開され、満席続出の好スタートを見せている。
『PLAN 75』は、是枝裕和監督が監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇「PLAN75」を新たに構築した、早川千絵監督のオリジナル脚本による初の長編映画。75歳以上が自ら生死を選択できる制度「プラン75」が施行された日本を舞台に、年齢による命の線引きというセンセーショナルなモチーフを打ち出しつつも、懸命に生きる人々の姿が繊細かつ丁寧に描かれる。
第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門正式出品され、カメラドール特別表彰授与という快挙を成し遂げた本作。全国90館(18日からは91館)で公開され、公開初日から日曜日までの3日間までに全国各地の劇場で満席が続出。メイン館である新宿ピカデリーの週末動員数では、トム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』の動員を抑えて首位の座についた。客層は30代以降の映画ファンを中心に、女性のグループや夫婦・カップルといった複数での鑑賞が多く、シネスイッチ銀座では金曜日の初回からチケットを求めて観客が長蛇の列をなし、土日も満席の回が続いたという。
SNS上には「震えるほど感動」「頭から離れない」「“生きる”という命題を観る者に突きつける大傑作」といった絶賛の声とともに、75歳以上が自ら生死を選択できる「プラン75」が施行された日本を舞台にしているとあり、その制度をめぐっては賛否の声があがっている。「PLAN50や60が有れば早めに選びたい 迷惑かけて生きるのは嫌」「制度として施行されたなら、使うかもしれない。使うことに対して肯定的で、抵抗はない」という肯定的な意見から、「本当にあったら選択肢ではなく “暗黙の圧力”」「自分は申し込みたいなと思う側だったけど、映画を観てそんな制度は絶対に否定しなきゃいけないと思った」など否定的なものまで、さまざまな議論を呼び起こしている様子。
超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自ら生死を選択できる制度をめぐって、大きく翻弄される人々の姿を描いており、主演の倍賞が高齢を理由に退職を余儀なくされて「プラン75」の申請を考える78歳の角谷ミチを演じるほか、制度に携わる人々に磯村勇斗や河合優実がふんした。現実感を持って迫ってくるリアリティーある設定で、果たして自分ならどうするか? と考えさせられる一作となっている。
今回、主演の倍賞のコメント映像も公開。倍賞は「みなさんもこの映画を観て、自分の生き方とか、命の大切さとか、愛とか、そういうことを一緒に観ながら考えていただけるといいなと思います。お友だちと一緒に、愛する人と一緒に、ぜひこの映画を観てください。劇場にいらしてください」と優しい顔でコメント。「人が生きることを全肯定する。そんな映画にしたい」と語った早川監督の思いに応えるように、観客へ命や生き方について考えてほしいと語り掛けている。(編集部・大内啓輔)