ヨルシカが初の実写映画主題歌 道枝駿佑&福本莉子主演映画で「幸福な王子」モチーフにした新曲を書き下ろし
ヨルシカが道枝駿佑(なにわ男子)と福本莉子のダブル主演映画『今夜、世界からこの恋が消えても』(7月29日公開)で、初めて実写映画の主題歌を書き下ろしたことが明らかになった。タイトルは、「左右盲」(さゆうもう)。オスカーワイルドの小説「幸福な王子」を歌詞のモチーフにした楽曲で、同曲と新たな本編映像を用いた新予告も公開された。
【動画】ヨルシカの主題歌入り『今夜、世界からこの恋が消えても』新予告
本作は、日本、韓国、中国書籍の合計発行部数が50万部を突破(2022年6月時点)するなど、国境を超えてベストセラーとなった一条岬の同名恋愛小説が原作。眠りにつくと記憶を失ってしまう「前向性健忘」を患ったヒロイン・日野真織(福本)と、そんな彼女を献身的に支えるも自らも大きな秘密がある主人公・神谷透(道枝)の儚くも切ない愛の物語が展開する。監督は、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)などで知られる恋愛映画の名手・三木孝浩。脚本を、『君の膵臓をたべたい』(2017)、『君は月夜に光り輝く』(2019)の月川翔監督と『明け方の若者たち』(2021)の松本花奈監督が共作で担当する。
主題歌「左右盲」(さゆうもう)を書き下ろしたのは、ボーカロイドクリエイターとして頭角を現していた n-buna(ナブナ)と、彼が見出したシンガー・suis(スイ)によって結成された2人組のバンド、ヨルシカ。彼らにとって実写映画の主題歌は初の試みとなり、脚本を読んで書き下ろした同曲について、n-buna は「相手の顔や仕草を少しずつ忘れていくことを左右盲になぞらえて書いた楽曲です。オスカーワイルドの幸福な王子を歌詞のモチーフにしています」とコメント。左右のとっさの区別がつかない様を、記憶が少しずつ失われていく真織になぞらえている。
本作の音楽を担当する亀田誠治は「この映画『セカコイ』には「人が人の幸せを願い、祈る気持ち」が通奏低音のように流れています。ですから音楽は、劇中のサウンドトラックから主題歌まで一筆書きで淀みなく設計する必要がありました。J-POPの地平線をくまなく見渡したところ、この『セカコイ』の物語性を表現できるのはヨルシカの世界観しか考えられず、ヨルシカと僕は音の往復書簡のようにやりとりを重ね「左右盲」という尊い楽曲が生まれました」と主題歌が完成するまでの道のりを振り返っている。
主題歌をひと足早く聴いた道枝は「映画の世界観にぴったりな、すごくいい曲だなと思いました」とコメント。福本も「最後の歌詞が、この物語と同様に切ないところがすごくいいなあと思いました。ヨルシカさんに歌っていただけて嬉しいです!」と喜びを語っている。
新予告は、「ねぇ、これって誰なのかな……?」と話す真織の一言に、“神谷透くんのことを忘れないで”と書かれたメモ。そして、「ごめんなさい……」と泣き崩れる泉(古川琴音)の姿からスタート。放課後の教室、帰り道のモノレール、海辺のピクニック……。記憶が消えてしまうと知りながらも互いに思いを募らせる2人のかけがえのない日々を、ヨルシカの主題歌「左右盲」が彩る。(編集部・石井百合子)
n-buna(ヨルシカ)
相手の顔や仕草を少しずつ忘れていくことを左右盲になぞらえて書いた楽曲です。オスカーワイルドの幸福な王子を歌詞のモチーフにしています。映画版とリリース版で楽曲のアレンジが少し変わっています。映画版では世界観に合うよう映画音楽を統括されている亀田誠治さんと相談しながら、冒頭の生活音的なサンプリングを減らして優しくアコギを聞かせる編成にしたり、最後のサビに男女でのコーラスを入れたり。よりエンディングに寄り添った、少しドラマチック
なアレンジになっています。そのちょっとした違いも映画の中で楽しんでもらえたら幸いです。
音楽:亀田誠治
時に素晴らしい小説は、読んでいるうちにあたかも自分がその小説の中にいるような感覚になることがあります。ある時から僕も、自分自身がこの『セカコイ』の物語の登場人物のような気持ちになっていました。いい歳こいたオッサンが 40 年前の学生時代にタイムスリップして、真織や透や泉の三人の輪の中にいるような……そんな奇妙な既視感です。この映画『セカコイ』には「人が人の幸せを願い、祈る気持ち」が通奏低音のように流れています。ですから音楽は、劇中のサウンドトラックから主題歌まで一筆書きで淀みなく設計する必要がありました。J-POP の地平線をくまなく見渡したところ、この『セカコイ』の物語性を表現できるのはヨルシカの世界観しか考えられず、ヨルシカと僕は音の往復書簡のようにやりとりを重ね「左右盲」という尊い楽曲が生まれました。映画『セカコイ』の物語に寄り添い、この時間軸でしか存在しない尊い音楽が、登場人物の心と、映画館で映画を見る人の心をつなぎます。
原作者:一条岬
分かつことのできない優しさと悲しさ。その陰影すらも表現された素晴らしい曲だと思います。自分にとってヨルシカさんは、安易に好きと言えないくらいに好きなアーティストでした。繊細で、切れ味に優れ、抜群の世界観がある楽曲の虜になっていたからです。「左右盲」を初めて聴いた時の衝撃は忘れません。原作で目指していた、光のような、悲しみのような優しさが体に流れ込んできました。喜劇でも悲劇でもなく、優しいだけでも悲しいだけでもない。そんな映画の余韻を彩ってくださる素晴らしい曲だと感じています。