Snow Man岩本照、役に繋がる過去の自分「きつかった時間も、乗り越えたあとには過程になる」
岩本照(Snow Man)が映画単独初主演を果たす映画『モエカレはオレンジ色』。もどかしくもキュンとする二人の恋のゆくえや、命の現場に飛び込んでいく特別救助隊員の逞しさ、誰かを「救いたい」という思いも描いた作品だ。主演として現場を引っ張っていくにあたり、これまでの経験が生きたという岩本だが、“ある過去”を持つ蛯原についても「共感できるところがある」と話す。
本作は、玉島ノンによる同名コミックを実写映画化したラブストーリー。転校してきたばかりの女子高生・萌衣(生見愛瑠)が、超シャイで真面目な消防士・蛯原(岩本)と出会い、恋をしたことで、明るく前向きになっていく物語。ともに真面目で不器用ゆえ、二人の恋はなかなかうまく進まない。
日常生活では人を担ぐ機会がないので(笑)
映画こそ単独初主演だが、岩本自身も「僕はわりと、いろいろなところで引っ張らせてもらいがち」と笑うように、Snow Man ではリーダーを務めていることは言わずもがな。「引っ張ってくぞ! と僕だけ違う方向に行っちゃうのは良くない。キャストがわちゃわちゃ楽しくできる空気を作りたかったし、みんなが笑い合える時間が多ければいいなと思った」とタイトな撮影スケジュールにおいても、座長として楽しい現場づくりを心がけた。
撮影の合間は、キャストとトレーニングをして過ごすことが多く、それぞれの目標にあったトレーニング法を指南することもあったそうだ。「トレーニングをきっかけに、いろいろ話せました。みんなで腕相撲をしたり、自然な距離感でいられた。本当に、すごく良いチームでした」と振り返る。
日ごろ重ねてきたトレーニングに加え、現職消防士の訓練を見て話を聞く機会もあったという。「日常生活ではあまり、人を担ぐ機会がないので(笑)、そこは新たにトレーニングを積みました。消防士の皆さんのトレーニングは、誰かを守るため、誰かの役に立つためのもの。皆さんは、自分の人生を生きているというよりも『誰かのために』生きているんだなと思いました」と勇姿を見て感じた思いを真摯に語る。
「生半可な覚悟じゃできない、本当に素敵で、かっこいい職業。『消防士ってかっこいいっすよね、なりたいっすわ』なんて、簡単には言えないなと思いました」
特別救助隊の象徴といえるオレンジ色のユニフォームにも、特別な感情がある。「本当に身が引き締まりました。ベルトを出す位置も、実は隊の人たちによって違うんです」と興奮ぎみに語る一方、「救助隊に紛れてかくれんぼをするって遊びを、一人でずっとやっていました。『あれ? 岩本どこ行った?』とスタッフの方が話しているのを、隊員の皆さんに混じって見て(笑)。けっこうバレないんですよ!」と、めったに着ることのないコスチュームに、はしゃぐ気持ちもあったことを明かした。
恋愛は片方が投げ続けるのではなく、二人で作っていくもの
原作は「月刊デザート」で連載中の人気コミック。読んだ感想を「スムーズにいかない、不器用な感じが良いんですよね。『なんだよ、キュンキュンするじゃねーか』って(笑)」と照れる。原作のときめきを「かゆい感じ」と表現する岩本は、痒かったポイントを「ここらへん。胸筋の中部くらい」と真剣な表情で述べ、笑いを誘う。「恋愛って、片方が投げ続けるのではなく、二人で作っていくもの。言葉のやりとりにキュンとしました。実際にはとても言えないなと思うと、かゆかったですね」と蛯原と萌衣が交わす言葉や距離感にときめいたという。
「超シャイで真面目」な蛯原は、岩本自身とも通ずるところがある。「しかも、同じく甘党。キーワードだけ聞くと『俺かな?』と思うくらい」と素顔の蛯原についてはさほど作り込まず、自然に演じた。
そのなかで、何よりこだわったのは「消防士」という職業に対する心構え。「訓練をたくさん積んで、たくさん勉強をして『特別救助隊』という職に就かれた方がいますから、演じている“今だけやっている感”が出るのは失礼だし、僕としても嫌だった」と空き時間には所作を教わり、違和感なく演じられるよう努めた。指導にあたった消防士からは「岩本くんならやってくれると思っていました」との言葉をもらったという。
きつかった時間も、乗り越えたあとには「過程」になる
蛯原が“ある過去”を背負って生きていることについて、「僕も、わりと過去を引きずって生きてきたというか。そう表現すると誤解があるかもしれませんが、いろいろな経験をさせてもらって、ここまできた」と思いを語り、多くの人の心を想像し、言葉を紡ぐ。
「何にも苦労もせず、ずっと楽しく生きてきた人って、この世にいないと俺は思っているんです。今は『楽しい』と言っている人も、絶対にきつい時期はあったはず。僕たちも、デビューするまでに時間がかかりました。ここで諦めてしまったら『失敗』になる、そういうことって生きていれば誰もが経験すると思います。だけど、きつかった時間も、乗り越えたあとには『過程』になる。それを僕は知っているから、経験を役に繋げました」
「蛯原と同じ経験をしたわけではないので、もちろんリンクできない部分もありますけど、共感できることが多かった」という岩本。たとえば「まわりが、蛯原と萌衣の出会いに盛り上がっていても、どこか一歩引いてしまう感じ」と安直に飛び込めないところは、自身も同じだという。
そんな岩本から見た蛯原の魅力は「嘘がつけないところ」。「不器用で、ごまかしがきかない。表情や仕草に出てしまうんですよね。(蛯原)はわかりやすい人。強がりや、誰もが持っている弱みみたいなものが見えるところも、リアルでいい」と蛯原の可愛らしい部分や人間らしさを長所に挙げた。
「意志や信念を曲げない、真面目なところも素敵だと思います」とまるで友人を肯定するように微笑む岩本。甘党、真面目、シャイ……そうした目に見える特徴よりも深く、蛯原をとらえ、共感し、彼の職務にリスペクトを抱いて演じた映画単独初主演作。岩本が演じるからこその魅力がたっぷり詰まった作品となったはずだ。(取材・文:新亜希子)
映画『モエカレはオレンジ色』は2022年7月8日より全国公開