『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ドク役クリストファー・ロイドの現在
16日夜のフジテレビ系「土曜プレミアム」枠にて、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(1990)リマスター版が地上波初放送される。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の人気キャラと言えば、タイムマシンを発明するちょっと変わり者っぽい科学者ドク。PART3では、ドクの恋のエピソードが見どころのひとつ。ドクを演じるクリストファー・ロイドは、どんな人物なのか。彼のキャリアと現在に迫る。
クリストファーは、1938年10月22日、アメリカのコネチカット州生まれで、現在83歳。マーティ役のマイケル・J・フォックスより20歳以上も年上だ。父は弁護士、母は歌手という家庭に育った。幼い頃から演技に興味を持ち、高校時代には仲間たちと学校の劇団を設立したほど。高校卒業後、19歳でニューヨークに出て、演技学校で演技を学んだ。
1961年、ニューヨークの舞台に初出演し、1969年にブロードウェイへ進出、多数の作品で活躍した。映画デビュー作は、彼が出演した舞台が映画化されることになり、舞台と同じ役で出演した『カッコーの巣の上で』(1975)。この映画はアカデミー賞で9部門にノミネートされ、作品賞、ミロス・フォアマンの監督賞、ジャック・ニコルソンの主演男優賞など5冠を達成し、クリストファーは注目を浴びるようになる。そして1978年には、テレビドラマ「タクシー(原題) / Taxi」(1978-1983)でクセの強いタクシー運転手にふんし、3度エミー賞に輝くなど、順調にキャリアを築いていった。
そして、彼を世界的スターにしたのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。続く『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』(1990)も世界中で大ヒット。さらにロイドは『アダムス・ファミリー』(1991)、『アダムス・ファミリー2』(1993)のアダムス一家の叔父・フェスター役でも人気を集め、誰もが知っている俳優になった。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にはこんな裏話もある。CBR.comなどによれば、プロデューサーのニール・カントンがSFコメディー『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』(1984)でのクリストファーの演技を気に入りドク役をオファーしたが、クリストファーは出演する気にならなかった。しかし、ロバート・ゼメキス監督に会って話しを聞いて出演することにしたのだそう。またクリストファーはドクを演じる際、個性的な実在の偉人、物理学者アルバート・アインシュタインと、映画『ファンタジア』などに出演している指揮者レオポルド・ストコフスキーを意識して役づくりしたと言われている。
ちなみにクリストファーは結婚歴が多数で、現在の妻は5人目。1959年~1971年は女優キャサリン・ボイド、1972年~1987年は女優ケイ・トルンボルク、1988年~1991年は一般人のキャロル・アン・ヴァネク、1992年~2005年はプロデューサーのジェーン・ウォーカー・ウッド、そして2017年に現在の妻リサ・リヤコーノと結婚している。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作で人気者になったクリストファーは、その後も多数の映画に出演。近年ではボブ・オーデンカークが主演したアクション映画『Mr.ノーバディ』(2021)で主人公の父親役を演じた。今後も話題作が続き、『スター・ウォーズ』のスピンオフドラマシリーズ「マンダロリアン」のシーズン3の複数エピソードへの出演も決定しているが、何の役かは未発表。
ほかにもレイチェル・リー・クックと共演するファンタジー映画「スピリット・ハロウイン(原題) / Spirit Halloween」が2022年全米公開。『ミッション:インポッシブル』シリーズのサイモン・ペッグ主演で実在の超心理学者ナンドー・フォドーを描く『ナンドール・フォドール・アンド・ザ・トーキング・マングース(原題) / Nandor Fodor and the Talking Mongooses』など、多数の作品が待機中だ。
そんなクリストファーは、tvfanatic.comのインタビューで出演作の中で気に入っている作品は何かと問われて、映画初出演作『カッコーの巣の上で』だと答えた。その理由は、作品の素晴らしさはもちろんとして、この映画が彼を映画界に入れてくれた作品であり、自分の人生を変えた作品だから、何年経っても大切さが変わることはないと語っている。240本を越える出演作品を誇る大ベテランになっても、初心を忘れない。そんなところに、クリストファーの魅力があるのではないだろうか。(文・平沢薫)