富野由悠季「Gレコ」はネタバレしても面白い!戦闘中の長セリフに反省も
『劇場版『Gのレコンギスタ IV』「激闘に叫ぶ愛」』の富野由悠季総監督が23日、新宿ピカデリーで行われた公開記念舞台あいさつに出席。映画のネタバレをしないように意識するキャスト陣に対して、「ネタバレというのは僕の年代では全然わかりません。ネタバレをしても面白いのが『Gレコ』なんだから文句を言うな!」と富野節を展開し、会場を盛り上げた。この日は石井マーク(ベルリ・ゼナム役)、嶋村侑(アイーダ・スルガン役)、佐藤拓也(マスク役)、逢坂良太(クリム・ニック役)も登壇した。
【画像】富野由悠季「忖度します」ガンダムジャケットで「Gレコ」イベント登場
本作は、富野総監督によるアニメシリーズ「ガンダム Gのレコンギスタ」をベースに、新規カットなどを加えて再編集した5部作の第4弾。資源が根絶した地球を救うエネルギー源「フォトン・バッテリー」を求めるメガファウナ(海賊部隊)の旅が描かれる。
歯に衣着せないトークが持ち味の富野総監督。この日も、そんな富野節が全開だった。最初のあいさつ中に、逢坂が「先ほどの舞台あいさつではネタバレ全開だったので、今回ネタバレしないようにするのは難しいですが、ワクワクしてもらうようなトークをしたい」と語ると、その言葉を受けて「嫌な事を言います」と前置きをした総監督は、「ネタバレというのは僕の年代では全然わかりません。ネタバレをしても面白いのが『Gレコ』なんだから文句を言うな!」とピシャリ。早々に飛び出した富野節に、キャスト陣も「そうだ!」「その通り!」と反応したほか、会場からも大きな拍手が起こった。
さらに「これまで『Gレコ』は『ガンダム』じゃないと言い続けてきましたが、この日着ているジャケットは『ガンダム』です」と告白した富野総監督。「僕ももう歳なんで、今回の『Gレコ』でガンダム系の仕事は一切しないようになるだろうから、これを着る機会は今回しかない」と理由を明かすと、「あともう一つあります。サンライズがバンダイナムコ系に名前が変わったんですが、これをプレゼントしてくれたのはバンダイナムコ系なので。営業論としてはここで着なかったら着るときはないなという。大人というのはそういう忖度をします。そういう意味ではバカにしてくださって結構です」とぶっちゃけた。
富野節全開の舞台あいさつだったが、大勢の観客を前にした総監督は感無量の様子で「社交辞令ではなく、まさかアニメの仕事をしてきて、ライブ感覚を持つなんてことは一生ないと思っていました」としみじみ。「やはりこういう風なところで、みんなと一緒に観られる場所を作るというのが芸能の仕事だし、アニメというのは芸能の仕事の一部なんだということを実感しています。そういう意味では、こういう場所で、ライブ感覚ある機会をいただいたのは、皆さんが来てくれたから。そういう意味では心から感謝します」とファンへ思いを伝えた。
一方、劇中でランニングシーンや筋トレシーンといった「宇宙空間での身体性」が登場する意味について質問された富野総監督は、「それは身体性ということではなく、道具というのは操縦する人がいるんだ、ということです。例えば、半日以上椅子に座っていられますか? ということなんです」と描写の背景を説明。その流れから、「実際に僕の作品でも4部はヒドいんですが、5部はもっとヒドいです」とぶちまけると、「戦闘中にセリフをしゃべっているんです。本当はそんなヒマがないはずなのにセリフを言わせています。それはなぜ? だってこれはアニメだからいいのよね、ということです」とズバリ。
「説明をしないで作れば、5部作じゃなくて済む。でも、それだと商売にならないから、いらないセリフを入れて尺を伸ばしているんです。皆さんは、そういう我々の魂胆も見抜いていただけたら面白いと思います」と続けた富野総監督は、「これは意識してやったわけではないんだけど、戦闘中のセリフは4部よりも5部の方が長い。第5部はヒドく長くなったと反省しています。これは袋だたきにしていただいて。覚悟していますので。『ガンダム』ファンから、『Gレコ』はつまらないと袋だたきにあうというのはこの5年間経験しています。この程度のたたきには耐えることはできるんです」と自信たっぷりの表情。会場の様子にニヤリとした総監督だったが、「でも気に入らないですね。今の発言に拍手が多い、というのはナメているなと思います(笑)」と憎まれ口を叩き、会場を笑いに包んでいだ。(取材・文:壬生智裕)