2022年前半の成功作・失敗作
2022年もすでに半分以上が過ぎた。アメリカでは、今週末に公開されるブラッド・ピット主演のアクション映画『ブレット・トレイン』で、夏の超大作も大体出そろう。ということで、ここまでのボックスオフィスを振り返ってみることにしよう。本当に成功した映画、逆に実は失敗した映画は、どれだったのだろうか?(文:猿渡由紀)
【トークノーカット】トム・クルーズが再来日を宣言!『トップガン マーヴェリック』ジャパンプレミアの様子
一番の大ヒット映画は、言うまでもなく『トップガン マーヴェリック』。公開から2か月以上たつ今も日米でトップ5以内に君臨している今作の世界興収は13億2,000万ドル(約1,782億円)で、歴代16位だ。ヒットメーカーのトム・クルーズとジェリー・ブラッカイマーにとっても、キャリア最高記録である。スーパーヒーローや長く続くシリーズ物がトップを飾るのが普通になった時代だけに、この映画がここまでの快挙を成し遂げたのは、なおさら新鮮だ。(数字は Box Office Mojo調べ、1ドル135円計算)
その次にヒットしたのは、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』と『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。だが、『~新たなる支配者』の北米興収3億7,000万ドル(約500億円)、世界興収9億4,300万ドル(1,273億円)が立派な数字であることは確かながら、『ジュラシック・ワールド』3部作の中では最低で、フィナーレとしてはやや物足りない。
スーパーヒーロー映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』と『ソー:ラブ&サンダー』は、堅調にヒット。それよりすごいのは『ミニオンズ フィーバー』だ。お金を使わず観客を喜ばせる映画を作るのが得意なアニメーションスタジオ・イルミネーションによるこの最新作の予算は8,000万ドル(約108億円)だが、全世界で『ソー~』を上回る7億1,800万ドル(約969億円)を売り上げているのである。日米ともにまだトップ4圏内にいるので、ここからまだ数字は伸びるだろう。
ほかには、大人向けで興行的には難しいのではと危惧された『エルヴィス』が北米興収1億3,000万ドル(約176億円)を売り上げてみせたこと、またアジア系キャストが中心のインディーズ映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(原題) / Everything Everywhere All at Once』(監督は『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナートとダニエル・クワン。日本でも公開予定)が北米で6,900万ドル(約93億円)のヒットになったことも、特筆すべきである。
一方で、思ったよりがっかりの数字に終わった作品も。一つは『バズ・ライトイヤー』だ。『トイ・ストーリー』のスピンオフで、SFアクション大作であるこの映画には、ピクサー作品の中でもとりわけ大きな期待が寄せられていた。しかし、北米興収は1億1,700万ドル(約158億円)、世界興収は2億2,200万ドル(約300億円)と、ピクサーでは珍しく失敗した『アーロと少年』をも下回る結果に。数字だけ見れば決して悪くないものの、製作予算が2億ドル(約270億円)かかっているため、赤字である。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』も、北米ではぱっとしなかった。『ハリー・ポッター』のシリーズながら、今年の北米興収ランキングで14位。『ファンタスティック・ビースト』シリーズ1作目の北米興収は2億3,400万ドル(約316億円)、2作目は1億5,900万ドル(約215億円)、今回は9,500万ドル(約128億円)と下がり続けており、あと2本作られる予定のシリーズの将来を心配する声も聞かれる。
コロナで何度か延期になったケネス・ブラナー監督の『ナイル殺人事件』も、ようやく公開された結果は残念だった。製作費9,000万ドル(約122億円)に対し、北米興収は4,500万ドル(約61億円)、世界興収は1億3,700万ドル(約185億円)。愛をテーマにしたこのスリラーは、カップルが一緒に過ごす日であるバレンタインデーの週末に公開されたが、とくにアメリカでは大人がコロナを怖がってまだ映画館を避けている状況だったことも影響したと思われる。ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ジョシュ・ギャッドらが出演した前作『オリエント急行殺人事件』(2017)と比べると、キャストの豪華さがやや劣る感じだったのも、関係したかもしれない。
ほかには、製作費1億5,000万ドル(約203億円)をかけたローランド・エメリッヒ監督の『ムーンフォール』が、北米興収1,900万ドル(約26億円)、世界興収4,400万ドル(約59億円)の大赤字に終わっている。