ベネックス監督『ディーバ』デジタルリマスター版で9月16日より公開
今年1月13日に75歳で他界したジャン=ジャック・ベネックス監督を追悼し、代表作の一本である『ディーバ』(1981)が9月16日よりデジタルリマスター版で全国順次公開されることが決定した。
ベネックスは、リュック・ベッソンやレオス・カラックスと共に、1980年代のフランスで興った“シネマ・デュ・ルック”(スタイルの映画=主に疎外された若者を主人公とする、きらびやかで趣向を凝らした視覚スタイルを特徴としたニュータイプの青春映画)として知られた監督。代表作に『溝の中の月』(1983)、『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1986)、『IP5/愛を探す旅人たち』(1992)など。親日家としても知られ、1993年に日本のオタクを題材にしたドキュメンタリー『オタク/Otaku(原題)』を撮りあげ、2016年には東京国際映画祭の審査委員長も務めた。
『ディーバ』は、ベネックス監督の長編デビュー作。主人公は、音楽を愛する郵便配達の青年ジュール(フレデリック・アンドレイ)。録音をしないことで知られるカリスマ的歌手シンシア・ホーキンスのコンサートで彼女の声を盗み録りしたうえに、楽屋でドレスを盗んでしまう。罪悪感にかられたジュールはドレスをホーキンスに返しに行き、激怒させるがそれを機に2人は親密になっていく。一方、瀕死の売春婦がジュールのバイクにあるテープを隠したことから、彼は組織に追われる身となる。歌手のホーキンスにソプラノ歌手のウィルヘルメニア・フェルナンデスがふんしたほか、リシャール・ボーランジェ、ジェラール・ダルモン、ドミニク・ピノンらが出演。
本作は、“シネマ・デュ・ルック”の象徴的な作品で、モノマニアックな若者、犯罪、オペラのアリア、禅、強烈な色彩感覚、ポップアート調の室内装飾などが特徴的。ハイカルチャーとサブカルチャー、西洋文化と東洋文化、スリラーとロマンスとアクションなど、一見相容れない要素を織り交ぜた作風が話題を呼び、フランスのセザール賞では新人監督賞、音楽賞、撮影賞、音響賞を、全米批評家協会賞では撮影賞を受賞した。
9月2日より角川シネマ有楽町で開催される特集「Peter Barakan‘s Music Film Festival 2022」での上映を経て、9月16日より劇場公開される。(編集部・石井百合子)
映画『ディーバ デジタルリマスター版』は、9月16日よりヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開