満島ひかり、現場で戦うムロツヨシが「かわいそうで可愛いかった」
映画『川っぺりムコリッタ』の公開記念舞台あいさつが17日、新宿ピカデリーで行われ、主演の松山ケンイチをはじめ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、荻上直子監督が出席し、食事シーンなどの裏話を語り合った。
本作は、『かもめ食堂』などの荻上監督が2019年に発表した長編小説を、自ら脚本と監督を務め映画化。北陸の小さな塩辛工場で働くために引っ越してきた山田(松山)が、隣人の島田(ムロ)や、アパートのオーナーである詩織(満島)など、ちょっと変わった“他人”と接するなかで、大切なものやささやかな幸せを実感していく。
できるだけ人と関わることなく生活することを望んでいた山田に、なにかと距離を詰めてくる島田。最初は島田のことを煩わしいと思っていた山田だが、もう食べるものもなく、ギリギリの状態になったとき島田から差し出されたキュウリやトマトに救われる。
その時に野菜を食べる山田の姿は非常にリアルだが、松山は「その状態で食べるということがどんな感じなのか、すごく興味があったので、何日間か食事をしないで撮影に臨んだんです」と裏話を明かすと「もうなんていうんですかね。美味しいという言葉ではなく、体の細胞が取り込もうと溶けていく感じ。食べるってこういうことなんだなと改めて思いました」と撮影を振り返った。
山田にとって救いとなった島田は、どこか不気味な隣人感が半端ない。ムロは以前の舞台あいさつでも、荻上監督から「いつものムロツヨシはいらない」と言われていたことを明かしていたが、「撮影現場では荻上監督との戦いでした」とこの日も強調する。現場で自身と向き合う姿に、過去にムロと共演経験のある満島は「とにかくやっつけられているムロさん。いつもよりふっくらして、汗でべったりしていて、それがかわいそうであり、とても可愛らしかった。すごく敗北感のある感じでした」と感想を述べる。
満島の言葉にムロは「敗北感って言葉は強いよね」と苦笑いを浮かべると、満島は「いつも優しいムロさんですが、特にこの現場は心がきれいで、とても優しかった」とすかさずフォローしていた。
そして、松山は「個人的にですが、自分自身の周りの小さな幸せをどれだけ発見できるのかが、これからの時代は必要になると思う」と述べると、「それは言語化できないものかもしれませんが、その曖昧なものを届けられたら嬉しいです」と作品に込めた思いを語っていた。(磯部正和)