スピルバーグ新作に絶賛評が集まる!映画作りと家族への愛に満ちた自伝的映画
第47回トロント国際映画祭
スティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的映画『ザ・フェイブルマンズ(原題) / The Fabelmans』のワールドプレミアが第47回トロント国際映画祭で行われ、批評家及びトロントの観客から大絶賛で迎えられている。スピルバーグ監督のトロント映画祭への参加はこれが初めてで、本作の初上映の地にトロントを選んだ理由については「この映画はとてもパーソナルなものだから、映画をただ愛している人たちに、一番初めに観てもらうべきだと思ったんだ」と明かしており、その思いは見事に届いたといえそうだ。
【画像】スピルバーグ監督の前作『ウエスト・サイド・ストーリー』
『ザ・フェイブルマンズ(原題)』は、映画館デビューで両親と『地上最大のショウ』(1952)を観て衝撃を受け、以来、映画作りにのめり込んでいったスピルバーグ監督の子供時代と、彼の作品に影響を与えた家族の関係を愛情に満ちた視線で映し出したもの。電気技師の真面目な父にはポール・ダノ、元コンサートピアニストで自由な魂を持った母にはミシェル・ウィリアムズ、おじのような存在で家族と多くの時間を共に過ごす、父の愉快な仕事仲間にはセス・ローゲンがふんしている。しかし、この“おじ”の存在が、家庭に嵐を巻き起こすことに……。
ワールドプレミアには、スピルバーグ監督の3人の妹たちも出席。現在75歳のスピルバーグ監督は今、この自伝的な映画を作った理由について、「言えるのは『引退を決めたから』というわけじゃない(笑)。約束します。そんなウソは信じないで!(笑)」と本作を引退作にするつもりはないと熱く宣言した。
本作のアイデアについては『リンカーン』(2012)の制作時から脚本家のトニー・クシュナーと話し合っていたものだが、新型コロナウイルスの発生をきっかけに本格的に着手することになったのだという。
「僕たちにはたくさんの時間ができ、たくさんの恐れも抱えることになった。2020年の3月、4月というのは、誰もが『これからのアートは、これからの暮らしはどうなるんだろう?』と考え、さらにそれが1年も続いた。そういう意味で、どんどん状況が悪くなるのなら、もし何かやり残すことになるのなら、本当に解決しておく必要があることは何だろう? と考えたんだ。ほとんど『やるなら今しかない』というような気持ちだった」
映画館のスクリーンにくぎ付けになっていた小さな少年が、いかにして誰もが知る映画の巨匠になっていったのか。映画の魔法に満ちた本作は、映画ファンにとってまたとない宝物のような作品となっている。(編集部・市川遥)
第47回トロント国際映画祭は現地時間18日まで開催