松田優作が“デジタルヒューマン”として蘇る!ショートムービーが公開
松田優作をデジタルヒューマンとして復活させる、東映ツークン研究所のプロジェクトの一環で制作されたショートムービーが公開された。
今回のショートムービーは、2010年に東映株式会社東京撮影所内のデジタルセンターの一部署として発足した東映ツークン研究所が制作したもの。同研究所は「コンテンツの未来をデザインする」というミッションのもと、企画・制作、研究開発を行ってきた。2019年からはデジタルヒューマン専門チームを編成し、3年間に及ぶプロジェクトを推進。2022年春には松田優作をデジタルヒューマンで復活させるプロジェクトを発表していた。
松田はかつて東映グループ会社のセントラルアーツに所属し、映画『最も危険な遊戯』『蘇る金狼』『探偵物語』『華の乱』などに出演し、遺作となった『ブラック・レイン』ではハリウッドにも進出。今回制作されたショートムービーでは、松田の独特の雰囲気やオーラをデジタルヒューマンとして蘇えらせるべく、顔の復元にはツークン研究所が運用するスキャンシステム「Light Stage」で取得した複数人の超高精細3DCGデータをもとに、機械学習で生成した顔モデルが利用されたという。表情の動きにはトラッキング技術を使用して松田のボディダブルの表情を解析し、アニメーションがつけられた。
また、声の復元に関してはAIによる音声復元およびAI音声ディレクション全般をゲーム開発から映像、メタバースコンテンツ開発などの制作を幅広く行なっている株式会社 ORENDA WORLD が担当。そして、音声合成分野で有名な名古屋大学発の企業である株式会社TARVOのAI音声変換技術「Suara」を使用して復元に挑んだとのこと。
映像では、松田が夜のトンネル内で車を運転する姿や、彼が触れたことのないはずの現代のスマートフォンを使っての通話姿、昭和を感じさせるようなジッポーでの煙草に火をつける姿などが見ることができ、情緒漂う映像となっている。最後は「YUSAKU MATSUDA」のクレジットで締めくくられる。
現代と過去が融合された映像の監修には、松田優作のクリエイティブ全般を担う女優・写真家の松田美由紀が務めた。今回の映像について「青いライト、煙草の香り。俳優、松田優作の短編映画ができあがりました! 亡くなって33年経った今、皆さんの想いで新作が作られた気持ちです。監修ではパソコンに向かって少しづつ、時間をかけて、優作の世界に入っていきました。形を追い求めるのではなく私の中の記憶、優作への想いを頼って一歩一歩近づいていく。圧倒的に強いオーラ。それだけを感じながら制作のお手伝いをしました。どんどん顔に魂が吹き込まれていくから不思議。ぜひ現代の優作に会ってみてね」とコメントを寄せている。
今回制作を行ったデジタルヒューマン研究開発プロジェクトでは、この技術をこれから先の映像作品の中に生かし、過去の偉人や大スターを現代のスクリーンの中に蘇らせるといった新たな映像体験を生み出していくという。さらに、エンターテインメント業界から飛び出して社会実装の観点から、AI技術と連携等をして街中での道案内や広告、または接客などのサービス業での活用など幅広い技術活用の可能性を追い求め社会の課題解決に挑むとしている。(編集部・大内啓輔)