朝ドラ「舞いあがれ!」舞は後方確認をする人 脚本家が求めたヒロイン像とは?
連続テレビ小説「舞いあがれ!」(月~土、NHK総合・午前8時~ほかにて放送、土曜は1週間の振り返り)が10月3日よりスタート。本作で制作統括を担当する熊野律時チーフ・プロデューサーが、本作に込めた思い、そしてヒロインを演じる福原遥らキャスティングについて語った。
連続テレビ小説の107作目となる「舞いあがれ!」は、1990年代から現在を舞台に、ヒロインの岩倉舞(福原)の姿を描く物語。舞はものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、大空に舞いあがるという夢に向かっていくさまを描き出す。
ヒロインの舞が空に憧れるきっかけとなるのが、長崎・五島に古くから伝わる「ばらもん凧」。ドラマで重要な役割を果たす「ばらもん凧」に込めた思いについて、熊野は「凧というのは、向かい風を受けないと空に上がれません。五島には、子どもの成長を願ってばらもん凧をあげるという風習があることを知り、まさにドラマが目指しているテーマとピタリと一致するものがありました」と語る。
また、空に憧れるヒロインというモチーフについては、脚本の桑原亮子が飛行機好きというところから出てきたという。「桑原さんと話をしていたときに、朝のドラマで空を見上げて、空に向かっていくというのは、前向きな希望を感じさせる。今の時代へのメッセージとして大事なものになるんじゃないかという話になりました」と明かす。
そして、コロナ禍を通じて、個人が行きたいところに行けるということが当たり前ではないと感じるようになったという。「人間は何百年も鳥のように空を飛びたいと夢見てきて、今は飛行機で自由に行き来できるようになりましたが、本来は飛行機を飛ばすことは危険と隣り合わせで、とても大変なこと。だから空を飛んだり、行きたいところに行くということは貴重なこと。だからこそどんな困難があってもヒロインが空に向かうというのは、大切なメッセージになるんじゃないかと」
熊野によると、桑原は常々「舞ちゃんは後方確認をする人」と話しているそうで、周囲の人たちに目を配る、思いやりのあるヒロイン像となっている。「舞は前に進むたびに、横や後ろや、まわりの人間を見て、みんなも一緒に来られているかなと気にしながら、みんなで一歩一歩進んでいけるような人。そういうお話として全体のドラマを作っていけたら」と意気込む。
共演者にも若手の注目株が集まった。赤楚衛二と山下美月(乃木坂46)が演じる舞の幼なじみは、全篇を通じて舞のかけがえのない存在となる。山下について「いろんな活動をされているなかで、話をするときも丁寧に考えて、落ちついている。堅実な部分があるなと思いまして。久留美という役は苦労人ですが、それでも自立して生きていくタイプ。山下さんの落ちついた感じが非常に合っていた」と起用理由をあげる。
一方の赤楚については「ヒロインの幼なじみ役としてはあまり見ないタイプかもしれません、文学的なことが好きで、繊細な部分のあるキャラクター。赤楚さんが優しく柔らかく演じていただいて、それは赤楚さん自身が持っているもの。舞にとって一緒にいて居心地がよくて、自分の思いを素直に語ることのできる人としてピッタリだと思いました」という。
さらに、舞が航空学校で出会う人々のキャストとして、目黒蓮(Snow Man)のキャスティングも話題となっている。目黒ふんする柏木はエリートパイロットの息子で、プライドが高くて近寄りがたい存在。だが、航空学校はチームワークが大事であり、一人では飛ぶことはできないことに気付き、変化していくことになる。「目黒さんは、無愛想で距離のある感じも、そこから変わって出てくるチャーミングさも抜群にすばらしい。見ている方がキュンとしてしまう、すごい魅力があると思います」と語った。(取材・文:壬生智裕)