岸井ゆきの、糖質制限でボクサー役の体作り シム・ウンギョンを圧倒【第27回釜山国際映画祭】
岸井ゆきの主演の映画『ケイコ 目を澄ませて』が9日、第27回釜山国際映画祭で上映され、三宅唱監督と岸井ゆきのが釜山シネマセンターで行われた舞台挨拶に登壇。さらに映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した韓国の女優シム・ウンギョンが応援に駆けつけ、本作の魅力を語った。
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本作は、聴覚障害と向き合いながらリングに立った実在のプロボクサー、小笠原恵子さんの生きざまに着想を得たストーリー。『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督がメガホンをとり、主人公を、不安や迷い、喜びなどさまざまな感情の中で揺れ動きながら歩みを進める等身大の女性として16mmフィルムで捉える。生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえない主人公ケイコを、岸井ゆきのが厳しいトレーニングを重ねて熱演。ケイコに寄り添うジムの会長に三浦友和がふんするほか、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子らが脇を固める。本作は、ベルリン国際映画祭ほか各国の映画祭で上映されている。
本作の応援団として駆け付けたシム・ウンギョン。「わたしはこの映画を2回観ましたが、岸井さんのこれまで演じてきたキャラクターとは全く違って驚きました。ギラギラした姿はケイコそのものでした」と感想を述べると、「岸井さんのように自分がなりきれるだろうかと思いました。どのような方法でボクサーの体を手に入れたのでしょう?」と岸井に質問。
岸井は「トレーニングは3か月ぐらい。その間は糖質制限をして体作りをしていたのですが、人は糖分が足りないと余計なことを考えなくなり、自分の好きなことしか見えなくなり、集中力が高まるんです。日々のトレーニングを通じてケイコの心情に近づけた」と、トレーニングを通じて自然と役づくりができたことを明かした。
三宅監督はもともとボクシングに関心はなく、人が殴り合って何が面白いのかとずっと思っていたというが、モデルとなった小笠原恵子さんの存在を知って本作を着想。「彼女がなぜボクシングに打ち込んでいくのかについて興味を持ちました。映画のテーマでもあるのですが、ボクシングも互いの信頼関係、つまり共存なんです。スパーリングでも互いの信頼関係がなければ成立しません。映画の中でさまざまな人の信頼関係を描いた」とテーマについて語った。
ところで、岸井にとって同作の舞台挨拶は釜山国際映画祭が初となる。「わたしはベルリンやほかの映画祭にも行ってなくて、観客の皆さんとこのようにお会いするのを楽しみにしていました。皆さんがこの映画を通じて何かを感じてくださったらいいなと思います。韓国でも配給が決まったとのことで、多くの方に観ていただけたら」と語ると、すかさずシムが「皆さん、面白いと思われたらSNSにどんどんアップしてください。面白くないと思ったら何も言わずに黙っていてください」と応援団ぶりを発揮し、会場からエールを込めた笑いが起きた。(取材・撮影・文:土田真樹)
映画『ケイコ 目を澄ませて』は、12月16日よりテアトル新宿ほか全国公開