映画『SLAM DUNK』は新たな視点で描いたスラムダンク 井上雄彦、ブログで心境告白
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された人気漫画「SLAM DUNK」(スラムダンク)の作者・井上雄彦が20日にブログを更新し、自身が監督・脚本を務める新作映画『THE FIRST SLAM DUNK』(12月3日公開)についての思いを語った。
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「SLAM DUNK」は、湘北高校バスケットボール部に入部した破天荒な初心者・桜木花道が、チームメイト・流川楓との衝突や、強豪たちとの試合を通して才能を開花させていくバスケ漫画の金字塔。テレビアニメ版も大ヒットし、一大バスケブームを巻き起こした。
井上は「THE FIRST」と題したブログで、新作映画が完成間近であることを報告。「新しいものを作れるのは、これまでの道のりがあってこそだと実感しています。1990年から96年の連載時期、そして今日までの長い年月。ジャンプで、単行本で漫画を読んでくれた人たち、TVアニメを見てくれた人たち、そしてリアルタイムでなく新たに出会ってくれた方たち、ありがとうございます」と作品を愛するファンに感謝した。
井上は連載当時、編集部に送られてくる読者の感想レターを読むことが一番の励みになったと明かす。「当時の自分はまだキャリアも浅く、正直に言えば、感謝の気持ちのほとんどは読者の人たちだけに向けられていたような気がします。時は流れ、今はもう少し視野が広がり、もっと多くの人に対する感謝の念が湧いてくるようになりました。漫画もアニメもそれぞれの現場で、制作から人々に届けるまでの過程でたくさんの人たちが携わってくれました。そんな全ての人たちに、感謝の気持ちでいっぱいです」
「SLAM DUNK」では花道や楓をはじめ、赤木剛憲、三井寿、宮城リョータら人気キャラクターを生み出した。井上は「自作のキャラクターをどう思っているかはなかなか知る機会もないと思うので、少し明かしますと……」と前置きし、「キャラクターたちは、連載が終わってからも引き続き自分の中で生きている感じがあります。新装版やイラスト集などで新しく描き下ろすたびにどこかから呼び出して、命を新たに吹き込んでいる感じで更新されていく、歳は取らないけど生きている、そういう感覚があります」とキャラクターたちへの思いを語った。
歳を重ねることで、キャラクターたちを捉える視点の数も少しずつ増えていくそうで、「こいつはこんなヤツだったのか、こんなことがあったのかと、いろいろな視点が浮かんで、その度にメモが少しずつ増えていきました。更新されてきました。昔、30年前には見えなかった視点もあれば、連載中からあったけどその時には描けなかった視点もあります」と井上。新作映画について「それらのいくつかが生かされたという意味で、新たな視点で描いたスラムダンクと言えます」と強調し、「キャラクターたちの新たな絵を描く時のように、何度も描いてきたはずだけど初めて出会う人のように、この映画も新たな命のようなものを持つことを願って取り組みました」と説明している。
「知らない人には初めての、知ってる人には、知ってるけど初めて見るスラムダンク」と映画を表現した井上。「そんな感じで気軽に楽しんでもらえたら嬉しいです。制作はいよいよ最後の上り坂をスタッフ皆で登っている最中です」とブログを締めくくった。(編集部・倉本拓弥)