King Gnu井口理、向いてないと思っていた芝居 初主演映画で「スタート切れた」
第35回東京国際映画祭
King Gnuの井口理が28日、都内で開催中の第35回東京国際映画祭内で行われた、主演映画『ひとりぼっちじゃない』の上映後Q&Aに、伊藤ちひろ監督と共に登壇。これまでも俳優として映画に出演してきた井口だが、「どこかで向いていないと思っていた」と胸の内を明かしつつも、本作を経て「役と向き合うってこういうことなのかな」と演じることへの気づきが多かった現場だったと語っていた。
【画像】かわいくピース!King Gnu井口理&伊藤ちひろ監督
脚本家としても活躍する伊藤が、自身の小説を自ら映画化した本作。うまく他者と通じ合えない歯科医師のススメ(井口理)が、マッサージ店で働く女性・宮子(馬場ふみか)との出会いをきっかけに、自身の自意識を開放していく。
この日、観客と一緒に映画を観ていたという井口は「“集中しろ”みたいな感じで、疲れました」と笑うと「原作ではススメの感情が日記に書かれているのですが、映画ではその部分が省かれていて、彼の気持ちは言葉になっていない。体の動きや表情で胸の内を見せている部分が多い。そんななか、前半と後半でススメの気持ちが変化していくところをどうやって明確に表現するかを意識して臨みました」と役へのアプローチを語る。
映画初主演となる井口を主人公に起用した伊藤監督は「小説が書きあがって映画化できるかもとなったとき、脚本を書く前に、原作を井口くんに読んでもらいました。もし彼にやってもらえるなら、映画化しようと思っていました」と告白。井口にこだわった理由について「行定(勲)さんの『劇場』という映画の井口くんの芝居が好きで、ずっと頭のなかに残っていました。この作品が映画化できるかも、と思ったとき、最初にススメ役として頭に浮かんだのが井口くん。ススメと似ているとは思っていないのですが、繊細な機微を見ていてイメージが沸いたんです」と説明していた。
観客からのQ&Aでは、井口の繊細な芝居を称賛するコメントが続いた。それを、照れくさそうに聞いていた井口は「僕はいままで、ちょこちょこ芝居“みたいなこと”をやっていたのですが、どこかで向いていないと思っていました」と率直な胸の内を明かすと「でも『ひとりぼっちじゃない』を通して、役と向き合うことってこういうことなのかなって。一つスタートを切れたんじゃないかなと思います」と語る。
続けて井口は「普段はバンドをやっていて歌をうたう人間なのですが、この映画で得たことや表現したことが、音楽に還元できるのかなと思ったし、いまの歌にも生きているのでは……と思っています」と述べると「普段歌っていることも、この映画に生きていたと思います」と、歌と演技の相互作用を強調していた。(磯部正和)
映画『ひとりぼっちじゃない』は2023年春公開