セザール賞で7冠!バルザック原作『幻滅』日本公開が決定
フランス映画界のアカデミー賞といわれるセザール賞で作品賞をはじめとする7部門で受賞を果たしたフランス映画『Illusions perdues(原題)』の邦題が『幻滅』に決定し、2023年に日本公開されることが明らかになった。
本作は、19世紀フランスを代表する文豪オノレ・ド・バルザックが書き上げた「幻滅」をもとにした社会派人間ドラマ。原作小説は、バルザックが44歳で書き上げた、社会で翻弄されるさまざまな人間像を描く「人間喜劇」の一編で、フェイクニュースやステルスマーケティング横行していた19世紀パリという現代社会とも通ずる時代の状況が描かれる。
物語の舞台は19世紀前半。恐怖政治の時代が終わり、フランスは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアンは、憧れのパリに、彼を熱烈に愛する貴族の人妻ルイーズと駆け落ち同然に上京する。だが、世間知らずで無作法な彼は社交界で笑い者にされる。生活のためになんとか手にした新聞記者の仕事において、恥も外聞もなく金のために魂を売る同僚たちに感化され、当初の目的を忘れ欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていく。
監督を務めたのは、バルザックの原作を学生時代から映画化したいと強く望んでいたという『偉大なるマルグリット』などのグザヴィエ・ジャノリ。主人公のリュシアンをフランソワ・オゾン監督の『Summer of 85』などのバンジャマン・ヴォワザン、リュシアンの先輩格として彼を教育していくジャーナリストを『アマンダと僕』のヴァンサン・ラコスト、誠実にリュシアンを見守る作家のナタン役を監督としても世界的な人気を誇るグザヴィエ・ドランが演じた。そのほか、セシル・ド・フランス、ジェラール・ドパルデュー、そして本作が遺作となったジャン=フランソワ・ステヴナンなど、フランス国内外の実力派俳優が集結している。
ジャノリ監督は現代的な要素を強調しながら風刺に富んだエンターテインメントを作り上げ、セザール賞では7冠に輝いた。「私はとても肉体的な感覚や刺激を映画に持ち込みたかった。サロンの人々の動き、パリの異なるエリアの大衆の猥雑とした雰囲気、あるいは時代が移り変わっていくそのスピード、そういったダイナミックなムーブメントを生み出しながら、ここに登場する人々の人生、悲劇と喜劇を結びつけたいと思ったのです」とコメントを寄せている。(編集部・大内啓輔)