小雪、映画のモデルになった福島智教授に指点字で感謝
俳優の小雪が5日、シネスイッチ銀座で行われた映画『桜色の風が咲く』(公開中)の公開記念舞台あいさつに登壇。この日は映画のモデルとなった福島智教授も舞台あいさつに出席したが、福島教授が自身の母を小雪が演じたことに「美人すぎる。こんなにええもんかと配役に疑問だったのですが、とても素敵に演じてくださいました」と感謝を述べると、小雪もホッとした表情を浮かべていた。舞台あいさつには田中偉登、吉沢悠、松本准平監督、結城崇史プロデューサーも出席した。
本作は、9歳で失明し、18歳で聴力を失った福島智(田中)が、母・令子(小雪)と編み出した独自のコミュニケーション手段を使いながら、東京大学先端科学技術研究センター教授を務めるまでになった軌跡を追う伝記ドラマ。
小雪は「この作品に携わることができて本当に幸せでした」としみじみ語ると、実在する人物を演じることに「責任とプレッシャーをものすごく感じていたのですが、心のなかで世の中に伝えていかなければいけないという使命のようなものが沸いてきました」と前向きな気持ちに突き動かされての参加だったことを明かす。
また小雪は「ご本人が監修されている役をやらせていただくというのは、非常に難しいことなんです」と述べると「健常者というのはいろいろな感覚に頼って生きているので、多くの情報の中から引き算をしながらの演技は、試行錯誤の連続でした」と苦戦したアプローチを述懐。同時に「だからこそ、生々しくリアルに描けたこともある。現場では綿密にディスカッションをしながら進める、モノづくりの極みのような時間でした」と貴重な体験だったという。
そんな小雪の演技に、福島教授は「自分の人生が映画になるというのはとても不思議ですね」と感想を述べると「映画のなかにはもちろんフィクションや脚色もありますが、かなり実話と連動するところがありました。でも小雪さんがおふくろ役と聞いて、ちょっと気恥ずかしかった。美人すぎるだろうと。こんなええもんかって配役には疑問を呈していました」と発言して会場に笑いが。それでも福島教授は「素敵に演じてくださいました。おふくろも喜んでいると思います」と小雪に感謝を述べていた。
舞台あいさつの途中には小雪が物語の重要なシーンであり、練習にも時間を割いたという指点字を披露する場面も。緊張した面持ちで指点字に挑んだ小雪は福島教授に「智先生、ありがとう。小雪」とメッセージを伝え、福島教授は「上手に打てていました。ちょっと手の位置が高かったので、いつの間にかおふくろの背が伸びたのかな」とユーモアたっぷりに話していた。
最後に小雪は「指点字の世界がもっと広がっていってほしい。そうすればあきらめていた世界も広がるし、大好きな人ともっとコミュニケーションがとれると思います」と熱い思いを語っていた。(磯部正和)