松たか子、沢田研二の不在に恐縮も「近年ない素晴らしい仕事」
俳優の松たか子が11日、東京・新宿ピカデリーで行われた沢田研二主演映画『土を喰らう十二ヵ月』(公開中)の初日舞台あいさつに、土井善晴(料理担当)、中江裕司監督と登壇。子どもの頃、お笑い番組でコントを披露している沢田を見て「こんな格好いい人に、こんな面白いことができるんだ! と衝撃を受けた」という松は、この日は不在となった沢田との初共演を振り返った。
撮影が日本映画としては異例の一年半に及んだ本作は、水上勉の料理エッセイをもとに、中江監督が独自に物語を創作。長野の山荘で暮らす作家ツトム(沢田)が、畑で自ら育てた野菜を料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を描く。
編集者でツトムの恋人・真知子を演じた松は、「中江監督に声をかけていただけたことと、沢田さんとご一緒できるというので『わー!』と思ったら、土井さんのお料理までついてきて、季節が変わる度に山に行って美味しいものを食べて帰るっていう、こんなに素晴らしい仕事は近年なかったね! というくらいのいい思いをたくさんさせていただきました」とにっこり。
また、「普段のわたしの生活からすると夢みたいな空間ですけど、これが今の自分を形作った人たちの暮らしで、日本人の血にもともと寄り添った生活だと感じられたし、いいなと簡単に言えない厳しさも山にはあるし、いろんなことを感じることができました。楽しくて贅沢な現場でした」と振り返った。
初共演した沢田の印象を尋ねられると、「面白いことをさりげなくできる力がある方なんだな……そりゃあたり前じゃん! と自分に言い聞かせましたけど、そういうお芝居を近くで見せていただきました」と敬服した。
中江監督は「役者は役に近づいて演じることが多いけど、沢田さんは自分の方に役をぐいっと引き寄せて、自分の中にあるツトムを取り出す感じ。それをドキュメンタリーのように撮っていけばよかった」と回顧。劇中、「鉄腕アトム」の曲を鼻歌で歌うシーンがあるのだが、それは沢田が休憩中に同じ姿を見せたことから採用したという。さらに、「NGを出したら何度でもやってくださるけど、やっぱり1回目がいいので、ほとんど1テイクでした」とも明かした。
最後に松は、「皆さんが一番会いたい方には成り代われない。ごめんなさい」と恐縮しながらも、「わたしはとてもこの映画が好きです。ユニークだと思うし、でも山の暮らしをしている方からすれば普段の暮らしだと思ったり、観る方によって何かを感じていただける映画だと思います。じわじわ来るんじゃないかな」と話し、「長く愛していただければと思います」と呼びかけた。(錦怜那)